研究実績の概要 |
高次視覚システムの中で機能する色認知システムの特性を研究するには、過去の視覚初期過程の特徴抽出の研究の場合と同様に、その時空間特性を考慮する必要がある。初期過程の先駆的研究が色情報の寄与を低く見積もったのは、この特性を考慮しなかったためである。最近の高次色認知研究にもその傾向があり、結果の多くで色の寄与は低い。本研究では、色の特性に適した大局的な時空間配置を用いて高次色覚認知に関する心理学的実験を行い、色の寄与を明確にすることを目的とした。 シーン再認に関する実験で、空間構造と色(輝度)情報の間に明確な相互作用が見られたことをふまえ、25年度はその脳内機序を探るためにfMRIによる計測を行ってきたが,26年度もそのデータを引き続き取得した。1次視覚野や初期の色覚部位からV4, IT野を含む腹側系皮質の各部位へ向かう高次の色処理の流れの中に幅広い賦活が認められたため、現在,その領域を中心に解析を進めている。 また本年度は,最近の物体認知に関する研究での低い色の寄与を再検証するため、CB(変化の見落とし)研究、シーンの意味や要点(gist)把握の研究についても、着色する物体の面積や色飽和度を連続的に変えたり、あるいはシーンの空間構造を色(あるいは輝度)の特性に同調させることで、色や輝度の寄与率が変わる可能性を検討した。実際に1部のデータはそのような傾向が示され,色の認知に適切な条件を整えることで,視覚認知における色情報の寄与率は高まる可能性が示された。
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