研究課題/領域番号 |
24530907
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
細川 徹 東北大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (60091740)
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研究分担者 |
鈴木 恵太 高知大学, 人文社会・教育科学系, 講師 (50582475)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 鏡像自己認識 / 自閉症 / 自己理解 |
研究概要 |
本年度は、①顕在的セルフ・アウェアネスの3水準(同一視的、永続的、外的)に対応する課題の開発を行った。水準1(同一視的)は現在の自分の映像(鏡に映っているのは自分)に気づくことで、古典的なルージュ課題を応用することとした。水準2(永続的)は過去の映像が自分であることに気づくことで、このとき自己は表象化され永続性を獲得していると考えられるが、課題としては遅延自己認識および時間・空間的要素を同時に統制するため写真見本合わせ(あるいは同定)課題を用いることとした。水準3(外的)は自分が他者からどう見えているかに気づくことで、いわば“見掛け”の自分を知ることであるが、これに対応する課題として仮面自己認識課題と他者が規定する自己の認知課題を用いることとした。水準1と2については、健常児(保育園、2~4歳)と自閉症児(特別支援学校および学童保育施設、社会年齢2~4歳)を対象とする実験は予定通り終了した。その結果、水準1では健常児の70%・自閉症児の50%が課題を通過したのに対し、水準2の通過率は50%・20%に留まった。このことは、健常児に比べて自閉症児は、鏡映イメージにおける動作等の同期性に関する視覚フィードバックの能力の発達には顕著な遅れは示さないものの、水準2で検証された時間的拡張自己への気づきに関して遅れが顕著であることを示すものである。すなわち、本年度の研究結果から、自閉症児は同一視的自己から永続的自己への発達の段階で通常とは異なる軌道を取り始めることが示唆されたといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「研究実績の概要」で述べたように水準1および2の実験は予定通り終了したが、水準3に関わる実験の実施が遅れている。その理由は、水準3の課題は内容と実施にやや難点があり、セルフ・アウェアネス分化過程の解明のために新たな視点に基づく課題の再設定が必要が必要と判断したためである。
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今後の研究の推進方策 |
水準3への新たなアプローチとして、高機能自閉症児におけるエピソード事象の因果関係の理解を、自閉症児自身がそこに含まれる場合と他者のみの場合の比較から検証する課題を設定し、新たな研究分担者を加えて研究を加速させることとした。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度交付予定直接経費130万円の内訳は、物品費30万円、旅費60万円、人件費・謝金30万円、その他10万円で、旅費の占める割合が多いが、これは仙台と高知で行われる実験に双方の研究者が参加することが主な理由である。その他に学会発表や研究打ち合わせにも使用する予定である。物品費と謝金の大半は実験の実施やデータ処理にかかわるものである。また、今年度から新たに研究分担者1名の追加を申請しているが、これによる研究計画(研究費使用計画を含む)の変更はない。
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