研究課題/領域番号 |
24530908
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
岩崎 祥一 東北大学, 情報科学研究科, 教授 (90117656)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 注意 / 対光反射 / 抑制 |
研究概要 |
本研究は、対象に注意を向け、その効果(注意集中)が時間的にどのように変化するかを検討することを目的としているが、平成24年度は、当初計画した実験を行う準備として、認知負荷の計測を行うための装置のセットアップを行った。 具体的には、先年、認知負荷の指標の一つとされている瞳孔径を計測するビデオ装置を購入してあったので、これを利用して認知負荷が注意集中後にどのような時間変動を示すかを計測できるかどうかを検討した。瞳孔径は、潜時が1秒程度のゆっくりとした時間で変動するので、一般的には短時間で変動する現象の時間推移を測定するのには向いていないと考えられる。しかし、先行研究を調べたところ、対光反射(光に対する縮瞳反射)の大きさが単純反応課題の有無で変化する(光提示に対して単純反応を行う場合には、行わない場合に比べ、対光反射が抑制される)ことが報告されている。現在使用している装置を用いて予備的に検討したところ、対光反射は短時間の光刺激でも生じ、かつ、光刺激(その中に情動価の異なる写真を埋めこんだもの)の情動価により、縮瞳の程度に違いが出る(陰性感情を刺激する写真の場合に縮瞳が抑制される)ことが判明した。これを利用して、時間経過によって注意集中の程度がどのように変化するのかを調べられるのではないかと考えて実験を行っている。 この認知負荷や情動負荷による対光反射抑制は、副交感神経の働きによることが知られている。注意の集中には、課題無関連の刺激処理を抑制するという機能があるが、対光反射の抑制を指標にすれば、こうした注意集中に伴う抑制について、客観指標が得られるのではないかと期待している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実績でも述べたように、現在、当初の計画にはなかったが、注意集中に伴う抑制の働きを客観的な指標を用いて計測できないか、検討している。そのため、初年度に計画した実験を、次年度以降に回し、瞳孔計測を用いた実験パラダイムの検討を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
対光反射の瞳孔計測により注意集中に伴う抑制のダイナミックスを検討する。具体的には、視覚刺激は対光反射を誘発するために用いるので、画面全体が一様な輝度で短時間フラッシュするようにする。対光反射の程度が注意集中に伴う抑制の程度に応じて抑制されるかどうかを、干渉課題を提示するタイミングとの関係から検討する。 干渉課題は、音声刺激を用いる。具体的な刺激としては、ランダムな数字系列を音声で提示し、その中に反応刺激を混ぜておく。反応刺激は、「右」あるいは「左」という音声で、この音声に対し、キイ押し反応を行わせる。実験条件としては、一致条件と不一致条件があり、一致条件では、音声で指示された側のキイを押す。これに対し、不一致条件では、逆のキイを押す(「右」なら左のキイというように)。不一致条件では、自然な反応傾向である、指示された言葉と一致した反応を行うという傾向を抑制する必要がある。これに対し、一致条件ではそうした抑制は必要なく、単にターゲットとなる「右」あるいは「左」が聞こえたら、それに対応するキイを押せば良いので、抑制はあまり起こらないと考えられる。音声課題を用いる理由は、フラッシュ光に対する対光反射に課題に関する刺激提示が影響しないようにするためである。 フラッシュ光の提示タイミングを音声刺激の提示の前後数ポイントとすることで、音声刺激に対する注意集中のダイナミックするを計測できるのではないかと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことによる未使用額であり、平成25年度請求額とあわせ、平成25年度の研究執行に伴い使用する予定である。
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