研究課題/領域番号 |
24530913
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
谷内 通 金沢大学, 人間科学系, 准教授 (40324058)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ワーキングメモリ / リハーサル / ラット / リクガメ / アカハライモリ / キンギョ / 放射状迷路 / 指示忘却 |
研究概要 |
本研究は,ラット,リクガメ,アカハライモリ,キンギョにおける放射状迷路等の諸課題の学習について検討することにより,ワーキングメモリ過程の存在と能動的リハーサルの制御機能の系統発生について明らかにすることを目的とする。平成24年度の成果は以下の通りである。 ラットの指示忘却実験では,放射状迷路を用いた課題を考案した。各アームの中央と末端に餌皿を設置し,中央餌皿でのwin-shift課題を与えたが,末端の餌皿で2種類の餌を提示して後のテストの有無の手がかりとした。習得後に末端餌皿での予告とは矛盾するテストを行うプローブ試行を挿入したところ,通常のテストよりも成績が低下することを示した。この結果は,認知資源配分型の指示忘却現象をラットで初めて示した成果である。 リクガメにおける放射状迷路学習では,2個体を同時併行して実験可能な装置・記録機器を設置し,2個体における自由選択課題の習得を示した。また,4アームの強制選択後の自由選択行動を検討することで,固定的な反応パタンではなく,遂行が記憶によるものであることを示した。系列位置効果の分析では,2個体で新近性効果,1個体で初頭性効果が認められた。 キンギョにおける放射状迷路の基本成績向上のための検討をアーム内への障害物の設置およびアーム幅の縮小による反応負荷の操作を中心に行った。その結果,チャンスレベルを超える遂行を確認することに成功したが,目的とした高水準の遂行には至らなかった。 アカハライモリでは,乾燥した迷路から水槽への逃避行動を利用することにより明暗弁別の成立を確認した。また,物体刺激を条件刺激,餌を無条件刺激とした古典的条件づけについて検討した結果,餌刺激提示場所への接近であるゴールトラッキング反応ではなく,物体刺激への接近によるサイントラッキング反応が増加することを確認し,古典的条件づけの成立を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ラットの指示忘却では,情動反応統制実験だけでなく,認知資源配分型の指示忘却現象を確認し,計画を上回る成果が得られた。 リクガメ,アカハライモリについてはほぼ計画通りの成果が得られた。 キンギョについては,放射状迷路学習を示したものの,基本的な遂行成績が期待した水準に到達しなかったことから,計画よりもやや遅れた状況である。 以上を総合すると,研究全体としては概ね計画通りの進行状況であると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
ラットの指示忘却では,予定を上回る成果が得られているため,認知資源配分型実験について予定よりもより精緻な統制条件を設定した実験を行い,精度の高い成果を得るよう方針を微修正する。 リクガメについては,計画通り,放射状迷路学習についての個体間一般性確認のための個体数の増加を行う。 アカハライモリについては,古典的条件づけを明確に示すことに成功したため,予定していた放射状迷路学習についての検討を先送りし,古典的条件づけの基本的現象および能動的な注意機能との関連が指摘されている潜在制止に関する検討を行う。 キンギョについては,放射状迷路遂行をさらに高水準に向上させることが難しい状況である。行動パタンの微視的分析からは,キンギョが放射状迷路課題に求められる単純なwin-shift傾向ではなく,餌の獲得場所を周期的に訪れるwin-shiftとwin-stayの複合パタンを持つことが示唆された。この行動傾向を遂行成績に結びつけるため,放射状迷路のアームを手がかりとした場所の見本合わせ課題について検討する方向へ計画を微修正する。これが成功した場合には,キンギョについては後の指示忘却計画も見本合わせ課題の改良による課題へと変更する。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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