動物モデルを用いて、思春期および成体期のニコチン投与が認知機能にいかなる影響を及ぼすかを検討した。被験動物にはC57BL/6Jマウスを用いた。34日齢(思春期投与群)または54日齢(成体期投与群)から毎日10日間、0.4mg/kgのニコチンを一日3回皮下投与し、最終投与の5週間後から約4週間に渡って認知課題を行った。その結果、思春期にニコチンを反復投与された成体マウスでは空間記憶課題の逆転学習の習得に遅れがみられ、また注意機能の障害も観察された。これらの認知機能障害は、成体になってからニコチンを反復投与されたマウスにはみられなかった。さらに、上記課題を行ったマウスの脳をゴルジ染色し、前頭前野および海馬の神経細胞を形態学的に解析した。その結果、思春期ニコチン投与群では、前頭前野の帯状皮質、縁前皮質、および海馬のCA3において樹状突起の長さと広がりに不全がみられた。成体期ニコチン投与群には、いずれの脳部位においても形成不全はみられなかった。 以上のように、思春期にニコチンを投与されたマウスでは、前頭前野や海馬の神経細胞に発達不全が見られた。一方、成体期にニコチンを投与されたマウスの脳では形成不全は観察されなかった。従って、思春期は成体期と比較してニコチンの影響を受けやすく、思春期にニコチンを摂取すると脳神経の発達に永続的な変容が生じる可能性が示唆された。また、思春期ニコチン投与によって生じた神経発達不全は認知機能に影響を及ぼし、逆転学習や注意機能の障害をもたらす可能性が示唆された。
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