研究課題/領域番号 |
24530915
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
朴 白順 京都大学, 人間・環境学研究科(研究院), 研究員 (50623550)
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キーワード | 神経心理学 / 高次脳機能障害 / 記憶障害 |
研究概要 |
本研究課題遂行2年目にあたる平成25年度には,引き続き,大脳疾患を有するさまざまな症例(健忘症例,自閉症例,依存症例,パーキンソン病例)を対象としたヒト記憶,特にはエピソード記憶機能への本質的,および相互作用的アプローチによる検討が行われた.本質的アプローチによる検討では,エピソード記憶を想起する際の想起特性を明らかにすることが,また相互作用的アプローチによる検討では,エピソード記憶の想起に促進的な影響を与える要因の解明が焦点であり,それらと関連する脳内機構を明らかにすることが研究の目的であった. 本質的アプローチにおいては,前年度に得られた健忘症例におけるエピソード記憶想起時の特性を踏まえ,健忘を呈する多数例の検討のための準備が進められた.作話(意図なしに表出される記憶内容の変造)を伴う健忘症例を対象とした私たちの予備的検討では,作話を呈した記憶情報の文脈(いつ、どこで)や事象(何が)の想起の誤りが,注意機能および長期記憶成績の低下と関連していた.このことから,エピソード記憶において重要である文脈情報がどのように想起されるのか,中でも長期記憶における時間情報の想起に焦点を絞った検討をすることを目的とした,多数例による検討を行うこととした.現在そのための準備が進められている. 相互作用的アプローチにおいては,前年度に続き,記憶に促進的影響を及ぼす要因とその脳内機構解明のため,パーキンソン病例、および健常被験者を対象としたデータを取得した.現在,症例22名,健常被験者24名のデータを取得しており,結果において,健常被験者では記銘時の情動処理や意味処理による,後の記憶の促進効果がみとめられた一方で,パーキンソン病例ではその効果がみとめられなかった.このことは,ドパミンの減少による前頭前野-線条体システムの不全によるものと考えられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
計画の遅れは,健忘症例およ自閉症例を対象とした検討で出ている.その理由として,健忘症例では,協力病院でのリクルートを継続して行ってはきたが,対象となる症例を確保することが困難であった.今現在,協力病院の枠を広げており,十分に検討を行える対象数を確保できている.また自閉症例でも同様に,症例確保が困難であったが,今現在,確保ができている.H26年度には,計画が遂行される予定である.
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今後の研究の推進方策 |
最終年度であるH26年度には,本研究課題計画に沿って推進していく予定である.具体的には,①遅れの出ている健忘症例,および自閉症例を対象とした,エピソード記憶想起時の特性の検討のための準備を今年度8月までには終え,期間内にデータ収集および解析,成果発表を行う.次に②パーキンソン病例を対象とした検討における,データ収集を終え,解析および成果発表,論文作成に着手する.③データ取得中である,依存症例におけるエピソード記憶の特性の検討においては,現在,症例のデータ収集は終えている.残りの期間内に,症例における結果解析をすすめると同時に,性別,年齢をマッチングさせた健常被験者のデータ収集および解析,成果発表を行う.④同じくデータ取得中である,もの忘れを主訴とする患者さんを対象としたMini-Mental Statement ExaminationおよびMontreal Cognitive Assessment-Japanese Versionとの比較検討を計画に沿って行い,解析および成果発表を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究課題計画における健忘症および自閉症を対象とした検討推進において遅れが出ているため,関連する人件費の未支出によるものである. 次年度であるH26年度には,健忘症および自閉症,並びに両群にマッチングさせた健常被験者を対象としたデータ収集をする予定であるため,本来の目的に沿って使用する予定である.
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