研究課題/領域番号 |
24530916
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
遠藤 光男 琉球大学, 法文学部, 教授 (90185166)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ヒト検出 / 顔検出 / 顔認識 / 魅力 / 人物情報 |
研究概要 |
本研究は,これまであまり研究の進展が認められなかったヒト検出過程の特性について明確にすることを目的とするものである。今回は特に,ヒト検出に影響する要因として何があるのか,我々はヒトをどの程度離れた距離から検出することができるのかといった点や,ヒト検出の手がかりとして顔と身体の相対的重要性,顔の既知性や表情,魅力などがヒト検出に影響を及ぼすのか,ヒト検出と同時にどんな人物情報が抽出されるのかといった点について検討を試みる。 初年度は,ヒト検出に関わる要因を探索的に研究するために,実験参加者に様々な自然なシーンの中からヒトを検出することを課し,その反応を計測した。提示されるシーンには,ヒトを含むものと含まないもの(動物や風景,仏像など)があった。そして,ヒトを含むシーンには,提示部位(頭,上半身,全身)と向き(正面,横,後ろ,シルエット横,シルエット正面),刺激提示位置(中央,周辺(上下))の3要因の条件を設定し,それらのヒト検出に要する時間への影響を検討した。32名の実験参加者の結果から,正面の顔が提示された条件が最も早く,ヒト検出の手がかりとして顔が重要であること,シルエットの場合には横顔の輪郭や手足などの身体手がかりが重要になってくることなどが示された。さらに,すべての条件でヒトの検出がきわめて早く(0.6秒以下),ヒト検出には顔以外の多様な手がかり,例えば,肌の色,髪の毛,服の形や色,体の輪郭の滑らかさ,文脈などが用いられていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の研究計画は,ヒト検出に要する時間に影響する要因を探索的に検討するために,写真素材集から収集したヒトや動物を含む多様なシーンを刺激として,刺激内に含まれているヒトの大きさ,位置,身体の向き(顔刺激の有無)等とヒト検出に要する時間の関係を明らかにすることであった。刺激収集の段階で,大きさ,呈示位置に関して,多様なバリエーションを得ることが困難であることが判明したため,初年度に条件統制を行ったのは,呈示されるヒトの部位(頭,上半身,全身)と向き(正面,横,後ろ,シルエット横,シルエット正面)にとどめ,大きさの要因と刺激内でのヒトの呈示位置についてはほぼ一定にした。ただし,大きさの要因については刺激全体の位置を中央呈示と周辺呈示の条件を設け,間接的に検討した。 したがって,一部当初の予定通りに十分に検討できなかった要因があるが,ヒト検出に関わる主要な要因の検討ができたことと,当初予定していなかったシルエットによるヒト検出過程の検討ができたこと,ヒト検出に関わる多様な手がかりが存在することが明らかとなり,探索的な検討によって当初想定していた以上の研究成果が得られた点もあった。以上から,初年度の研究は概ね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,当初設定した研究計画に沿って,研究を進めていく。特に,次年度は,初年度に検討できなかった刺激の大きさ(観察距離)がヒト検出に与える影響について詳細な検討を行う。通常,呈示されるヒトの大きさの違いは,観察距離の違いを反映するものとして扱われるが,刺激の大きさが極度に小さくなるとその解像度も低下する欠点がある。ここでは,それを克服するために,Loftus & Harley(2005)の「距離=フィルタリング」仮説(distance-as-filtering hypothesis)を適用し,刺激の大きさは一定だが,ある観察距離から見た刺激と同等の刺激を画像処理(空間周波数のコントラスト感度曲線をもとに高周波数成分をカット)によって作成し,それを用いてヒト検出に対する観察距離の影響と,ヒト検出が可能な観察距離の閾値,さらに,より厳密な条件設定のもとでヒト検出の手がかりとしての顔と身体の相対的重要性を検討する。 研究計画の最終年度にあたる再来年度は,今年度と同じ同様の刺激条件で顔の表情や魅力,既知性の異なる刺激人物を呈示し,ヒト検出への影響の有無を検討する。また,検出ができた場合には性や年齢,個人識別などの人物情報も正しく判断できているのかも検討する。 さらに,成果発表も学会発表,論文執筆の形で順次行っていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額(B-A,7,964円)は,主に事務用品など消耗品の購入にあてる。その他の翌年度分の助成金については,記憶媒体等の物品費(40,000円),成果発表旅費(国内,2回,120,000円),英語論文校正費(40,000円)を予定している。
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