研究課題/領域番号 |
24530917
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研究機関 | 東北文化学園大学 |
研究代表者 |
佐藤 俊彦 東北文化学園大学, その他の研究科, 准教授 (20322612)
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キーワード | SHR / WKY / ラット / 遅延照合課題 / 選択反応時間課題 / オペラント条件づけ / 記憶 / 注意 |
研究概要 |
平成24年度より高血圧自然発症ラット(SHR)を用いて、5選択反応時間課題(5CSRT)および遅延照合課題(DMTP)という2種類の学習課題を行い、その習得過程の特徴を調べてきた。24年度には、比較群のWistar-Kyoto系ラット(WKY)に比べて、SHRのレバー押し反応の初期の形成過程に遅れがあることを認めた。そこで25年度には、このような遅れの原因と、学習を円滑に進めるための方策についての実験的な検討を行った。反応形成の初期に行っていた自動反応形成(Autoshaping)の手続きに若干の変更を加えて、昨年度の成績との比較を行った。昨年度には、格納式レバーを、餌を投下して提示する餌皿と反対側の壁に配置し、両者の間には比較的長い距離があった。これに対して、今年度には、レバーを餌皿に同じ壁に近接させて配置した。その結果、自動反応形成におけるレバー押し反応の頻度について、SHRとWKYとの差をほとんど認めなくなったとともに、自動反応形成に続いて行った連続強化などのの学習成績についても、WKYとの間にほとんど差がなかった。つまり、SHRの自動反応形成での成績は、餌皿(目標)とレバー(信号)との距離に大きく依存しており、その距離を長くすることで、WKYよりも大きく成績が下がり、以後のレバー押しの学習成績にも影響することを明らかにした。注意欠陥多動性障害のモデルとも考えられているSHRでは、注意の範囲が狭く、目標と信号の距離が離れることで、信号にまで注意を向けることが困難になるため、自動反応形成の成績が健常ラットよりも大きく損なわれたと推定できた。また、DMTP課題に関して、昨年度のように3本のレバーを用いるより、2本のレバーで行ったほうが習得が早いことも明らかになった。ここで得られた研究成果の一部は、26年度中、国内外の学会にて研究発表を行う予定である(北米神経科学会他)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成24年度には、上述の概要に記したように、SHRの自動反応形成の課題成績が低く、オペラント条件づけの進行が比較的遅い可能性が示唆された。また、SHRとWKYのDMTS課題の成績が、全体的に、予想したよりも低かった。こうした問題は、今後の研究計画に大きな影響を与えうるので、25年度には、当初の計画を変更して、上述の24年度の実験を継続し、長期的な学習経過を観察するとともに、実験の手続きについての検討を行って、SHRの学習成績が低い原因の究明と、学習効率を高めるための方策を考案することを優先的に行うこととした。その結果として、当初計画していた血管拡張薬ヒドララジンを高用量(0.6 mg/kg)で静脈内投与する実験研究を実施することはできなかった。他方、上述の方法論に関する検討の成果として、前年度から実施していた3レバー型のDMTS訓練を、当初の計画よりも期間を延長して継続的に実施した結果、学習成績が目標とする水準の手前で頭打ちになり、3レバー型の課題がこれらのラットにとって難易度が高すぎた可能性が示唆された。そこで、概要にも記したとおり、自動反応形成におけるレバー配置を変更し、それに続いて、2レバー型の課題を実施したところ、SHRとWKYの系統差が小さくなり、全体としても学習成績が比較的順調に向上することを確認した。これらの研究成果より、学習成績を向上させる方策に関して一定の示唆を得ることができたと考える。今後、これらの研究成果に基づいて実験手法を修正し、平成26年度以後の計画を見直すことにより、25年度分の遅れを取り戻して、平成28年度までの研究期間内に、当初予定していた研究計画全体を実現できるよう努めたい。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度に行った方法論の検討結果に基づいて、平成26年度以後の実験手法を修正し、研究計画を見直す。この見直しにより、25年度分の遅れを取り戻して、28年度までに、当初予定していた研究計画全体を実現できるよう努めたい。具体的な方策として、1)DMTS課題に関連した自動反応形成においては、餌皿とレバーを近接させる。2)DMTS課題においては2レバー型の課題を用いる。また、25年度には、DMTP課題を実施するためのスキナー箱を1台増設したので、この装置の活用によっても、今後の実験遂行の効率化を図ることができる見込みである。当初の計画では、平成25年度から平成26年度の2年間にかけて、血管拡張薬ヒドララジン投与がDMTS課題の成績に及ぼす効果を明らかにする予定であった。平成25年度の研究内容が、上述のとおり、方法論的な検討を中心としたものになったために実施できなかったヒドララジン投与実験のデータ収集を、可能な限り平成26年度内に実施したいと考える。その遅れを取り戻し、平成28年度までには、当初予定していた研究計画をすべて実施できるよう努めていきたいと考える。
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次年度の研究費の使用計画 |
動物の実験用固形飼料(ペレット, 45 mg)の購入費用として確保した消耗品の予算であった。ペレットの消費量が比較的少なくて済んだので、年度内の購入は不要となった。動物用の飼料であり、消費期限のある物品であるので、次年度の実験に際して購入することが望ましいと考えた。 平成26年度において、ペレットの購入費用に充てる予定である。
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