研究課題/領域番号 |
24530922
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
岡田 隆 上智大学, 総合人間科学部, 教授 (00242082)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 海馬 / ラット / 概日リズム / 新奇物体再認課題 / 新奇位置再認課題 |
研究概要 |
学習成績の日内変動に関する従来の報告は、おもに嫌悪刺激を含む課題を用いたものであり、海馬依存性学習における成績の日内変動の有無および様相は不明確であった。本研究では、明期・暗期それぞれ12時間の明暗サイクルの下で飼育されたラットを用い、海馬依存性学習である新奇物体再認課題および新奇位置再認課題における成績の日内変動について検討した。1日のうちの4つの時間帯(明期前半、明期後半、暗期前半、暗期後半)いずれかの時点で訓練試行を行い、その1時間後と24時間後にテスト試行を行って各群の成績を比較した。新奇物体再認課題の場合、訓練試行では同一の物体を2つ設置した装置内をラットに探索させ、テスト試行時では訓練試行で呈示した物体のうち片方を新奇物体に変え装置内を探索させた。新奇物体を探索した時間が総探索時間に占める割合を弁別指標として算出し学習成績として評価した。その結果、1日のうちの時間帯にかかわらず成績はほぼ一定であり、顕著な日内変動はみられなかった。一方、新奇位置再認課題の場合、獲得試行では異なる2つの物体が対角線上に配置された装置内をラットに探索させ、テスト試行では一方の物体の位置を新奇な位置に配置して探索させた。テスト試行における総探索時間に占める新奇位置物体の探索時間の割合を弁別指標とし、学習成績として評価したところ、明期よりも暗期の方が好成績であった。一般に、嫌悪刺激を伴う課題の場合には逆に明期のほうが好成績とされるため、本研究により、用いる学習課題によって日内変動の様相が異なることが示された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、海馬依存性の学習課題を2種類用いて、4つの時間帯におけるラットの学習成績の比較を行うことができた。海馬依存性学習に特有の日内変動を見いだすことができたため、研究はおおむね順調に進展していると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
前年度の実験により、海馬依存性学習の日内変動について明らかにすることができたため、本年度以降はそのメカニズムの解明を目指した実験を行う。日内の時間帯による生体外部の環境変化は生体内物質の分泌量を変化させ、学習や記憶に影響を与えると考えられる。たとえば、学習の生理学的基礎と考えられている海馬長期増強は、夜間に多量に分泌される松果体ホルモン・メラトニンによって増強の程度が減弱することが電気生理学的実験により明らかになっているため、位置再認課題における記憶成績の日内変動に対してメラトニンが与える影響について検討する。獲得試行では異なる2つの物体が対角線上に配置された装置内をラットに探索させ、テスト試行では一方の物体の位置を新奇な位置に配置して探索させる。明期と暗期が各12時間の明暗周期で飼育したラットを用いて、明期と暗期いずれかの時間帯にメラトニン(10mg/kg)もしくは生理食塩水を腹腔内投与(10ml/kg)し30分後に獲得試行を行う。その1時間後に短期記憶テストを、23時間後に長期短期テストを行い、この成績がメラトニンの有無によって変動しうるかどうかを検討する。これに基づき、海馬依存性学習の日内変動にはメラトニンが関与しているか、また関与の仕方は促進的か抑制的かについて明らかにすることを目指す。予備的な実験はすでに開始している。
|
次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
|