本研究は,順序のあるカテゴリカルデータの数量化の方法として知られている多重対応分析を,心理測定において多用されている,多数の質問項目への順序のあるカテゴリー反応にもとづく尺度構成の方法,いわゆる Likert 尺度に適用しやすく revise することを目的とした。 最終的に,次のような方法が定式化された。 1.通常の多重対応分析を,カテゴリー反応に付与された多次元の数量の合計得点(sum score)の分散を最大化する方法として再定式化した上で,各変数に与えられた数量化得点を正規直交化することを通じて,多重対応分析の結果をその説明力と個体の数量化得点は全く変えないまま(主成分得点と読みかえる),主成分得点の分散の和の最大化としての主成分分析に変換する。これによって,数量行列,標準化された数量化行列と主成分重み行列の積に分解される。これは,今までに示されたことのない,多重対応分析と主成分分析の missing link である。 2.すでに提案されていた,重み行列を左右から直交回転する方法の適用により,必ずしも順序のついていないカテゴリカル反応の分析にも新たな視点がひらかれることを実データの分析によって示した。また,全体としての数量化次元を,反応カテゴリー数ー1以上に設定した場合,数量化行列は正規直交化されているという条件の下で,完全に不定となることを示した。 3.この不定性を利用して,カテゴリーに与える数量を,カテゴリー番号の直交多項式として定義する。これによって,非計量的方法であった多重対応分析は,その説明力を維持したまま,完全にメトリックな方法となる。 4.なお残る数量化得点の不定性の解消のため,重み行列を右から直交回転する。これは,Harris-Kaiser回転として知られる一種の斜交回転の方法と一致する。実データの分析から,個人差の新たな次元が得られる可能性が示された。
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