研究課題/領域番号 |
24530929
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 愛知淑徳大学 |
研究代表者 |
吉崎 一人 愛知淑徳大学, 心理学部, 教授 (80220614)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 認知的制御 / 視覚的注意 / ラテラリティ / 般化 |
研究概要 |
本研究の3つの目的のうち2つを実施した。 1つめの目的は,視覚情報の認知的制御である「視覚情報選択性の調整」は,左右半球で独立に行われていることを実証することであった。3つの実験より,この点を明らかにした。1つは,視覚情報を左右視野に呈示した事態と上下視野に呈示した事態との間で,視覚情報選択性の調整がどのように異なるかについて検討した。その結果,左右視野に呈示した事態の方が視覚情報選択性の調整が顕著であることが明らかとなった。これは,左右視野に呈示した事態では,呈示位置に依拠した調整システムに加え,対側半球の関与が加わり,調整の程度が大きくなったと推察された。2つめの研究では,左右視野呈示条件に加え,中央呈示条件を設定し,左右視野での競合頻度の操作が中央呈示位置での調整傾向に影響するか,並びに中央視野での競合頻度操作が左右視野での調整傾向に影響するかについて注目した。その結果何れの事態においても,競合頻度操作に応じた視覚情報選択性の調整が認められ,これは呈示位置のみならず,左右半球が視覚情報選択性の調整に関与していることを示唆した。3つめの研究では,対比的なラテラリティを示す大域-局所課題を適用した。その結果,課題に優位な半球では調整が行われないが,優位でない半球で競合頻度に応じた視覚情報選択性の調整が示された。 2つめの目的は,視覚情報選択性の調整の持続性並びに刺激,課題間での般化について明らかにすることであった。ブロックレベルで競合頻度を操作したトレーニングセッション後に,競合頻度を50%にしたテストセッションでの適合性効果を観察した。結果は,持続性はみられず,テストセッションでは競合頻度に応じた適合性効果が観察された。 空間ストループ課題とサイモン課題が混在する事態で,視覚情報選択性の調整の課題間の般化についても検討した。その結果,課題間での般化は生じなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
視覚情報の認知的制御である「視覚情報選択性の調整」の,持続性,並びに課題間での般化について明らかにすることが,本研究の目的である。具体的には,(1)視覚情報選択性の調整に左右半球が関与しているのか,(2)視覚情報選択性の調整の持続性,般化の特性を明らかにすること,(3)視覚情報選択性の調整のエイジングを明らかにすること,である。 初年度としては,(1)について終了することを目的としていたが,これについては予定通り一応終了し,成果(査読付き論文2本が掲載予定)を発表している。当初は計画していなかったが,(2)についてもいくつかの視点から実験検討をはじめ,成果も発表している(学会発表,並びに査読付き論文1本が掲載予定)。(3)については,(1)(2)の知見を踏まえて検討することが望ましいため,来年度以降の実施とならざるを得ない。 以上の点から,初年度の当初計画以上に,成果は進展していると考えて良い。
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今後の研究の推進方策 |
ブロックレベルで獲得された視覚情報選択性の調整傾向が,維持される規定因,般化される規定因について,実験的検討を積み重ねる。 これまでは,200試行以上のトレーニングセッションを行ってきたが,より少ない試行数での逐次的に競合頻度が変化した事態での,適合性効果の変動について検討する。48試行のフェ-ズごとに競合頻度を操作して,適合性効果の変動をみる。1フェーズを32試行,16試行に減らしていきながら,試行数と適合性効果の変動系について検討する。これには60名ほどの健常大学生を対象とする必要がある。 サイモン課題,並びに空間ストループ課題を使った刺激間の般化実験を行う。刺激には矢印(↑↓),ひらがな(うえ,した),漢字(上,下)を用い,この中から2つを選び,一方の刺激のみ競合頻度を操作し,もう一方の刺激の競合頻度を50%に固定する。固定した刺激の適合性効果に注目する。各課題,各組み合わせに実施する必要があるため,6つの実験が必要となり参加者(大学生)は合計120名となる。 さらに,夏休み期間中に,大学生の般化,維持傾向と,健常高齢者のそれを比較する実験を行う。高齢者実験は,同時に複数の実験室での実施が必要となるため,実験補助者は6名は最低必要となる。また,アルバイトとして参加していただく高齢者は50名以上を予定している。実験内容は,Yoshizaki et al.(2013)をもとにしたものとし,算用数字を刺激とした視覚情報選択性の傾向が,漢数字にも般化するか否かについて検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
健常高齢者,大学生の実験参加者に対する謝礼,並びに実験実施補助に対するアルバイト謝金,学会等での資料収集でのアルバイト謝金,研究代表者・連携研究者の研究発表,資料収集に対する出張費に60万程度を予定している。 連携研究者の作業効率を上げるために,分析用パソコン購入に20万程度を予定している。 研究成果を発表するための英文校閲や消耗品購入,論文購入にも30万程度を予定している。
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