研究実績の概要 |
視覚情報選択性の調整の機構について,般化,ラテラリティ,そしてエイジングの視点から,刺激反応適合性パラダイムを使って明らかにすることを目的とした。 これまで研究代表者らは,競合頻度(一致試行の出現確率,以下PC)に応じて,視覚情報選択性は調整されることを明らかにした。つまり,PCが大きい時に比べ小さい時に,適合性効果は小さくなった(PC効果)。このPC効果の生起が,何試行で得られるかについて検討した。具体的には,フランカー課題を使って,16試行,32試行,48試行ずつのブロックを用意して,競合頻度と適合性効果の間の傾向について観察した。その結果,16試行でPC効果を確認し,32試行ではそれが強固なものとなった(Kuratomi & Yoshizaki, under review)。 一方,このような柔軟な視覚情報選択性の調整は,年齢とともに低下することをサイモン課題を使って明らかにした(Yoshizaki et al., 2014)。 視覚情報選択性の調整機構を探るために,PC効果の般化について検討した。本研究での般化のパラダイムは,同一課題内において,特定の位置や特定の刺激(例 仮名表記)におけるPCを変動させ(変動条件),他の位置,刺激(例 漢字表記)のPCを固定にした条件を設定して,固定された条件での適合性効果が,変動条件のPCに応じて変動するかについて注目した。空間ストループ課題を使って検討した結果,視覚情報の共通項(刺激表記の種類,呈示位置)の有無が般化要因であることが示唆された(渡辺・吉崎, 2014, 2015, 印刷中)。 また,PC効果に顕著なラテラリティが見られないことが示された(渡辺・吉崎・北原,2015)。 以上の知見は,競合解消の経験頻度によって影響をうける視覚情報選択性の調整機構の解明につながるものとなった。
|