研究課題/領域番号 |
24530931
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
中島 定彦 関西学院大学, 文学部, 教授 (40299045)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 味覚嫌悪学習 / 条件づけ / 運動 / 水泳 / 走行 / 系統差 / マウス / ラット |
研究概要 |
ラットに味覚溶液を摂取させた後、水槽で泳がせると、味覚溶液に対する嫌悪学習が生じる。これは、味覚溶液を条件刺激、水泳によって生じる生理的変化を無条件刺激とした古典的条件づけだと考えられる。 本年度はこの水泳性味覚嫌悪学習に関して3つの実験を実施した。まず、この学習がマウスでも見られるかどうかを検討した。味覚溶液AとBを用いて、溶液Aを摂取させた後に水槽で泳がせ、溶液Bの摂取後は水泳経験をさせないという分化条件づけ手続きを繰り返し行った後、テストでは溶液AとBを同時呈示して摂取量を比較した。その結果、マウスは溶液Aを有意に避けて溶液Bを飲んだ。このことから、マウスにおいても水泳性味覚嫌悪学習が生じることが実証できた。 次に、水温がラットの水泳性味覚嫌悪学習に及ぼす効果を検討した。その結果、水温22℃群、30℃群、38℃群の全てにおいて味覚嫌悪が形成されなかった。作業を担当した学生が不慣れであったことが原因として考えられる。しかし、水泳中のラットの行動を観察したところ、高温の水で泳いだラットは遊泳中に不動状態の時間が長く、遊泳後は活発に活動する傾向があった。このことから、作業に慣れた者に実施を担当させることで、水泳性味覚嫌悪学習に及ぼす水温の効果を見出すことができるのではないかと思われる。 最後に、味つきの水槽で泳がせるという簡便法でも水泳性味覚嫌悪学習が確認されているので、その再確認を行うとともに、この手続きにおける訓練試行数(1回または4回)の効果を検討した。しかし、訓練試行が1回でも4回でも味覚嫌悪学習を検出できなかった。作業を担当した学生が不慣れであったことが考えられるが、簡便法による味覚嫌悪学習は頑健ではない可能性もある。 以上のほか、水泳性味覚嫌悪学習に関する理論的考察のため、回転かご走行や砂糖依存からの剥奪を無条件刺激とした味覚嫌悪学習の実験も実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は水泳性味覚嫌悪学習の手続きを条件づけ研究の標準的な手法の1つとして確立することを目指している。具体的には、(1)この学習においてラットの系統差が見られるかを検討し、(2)他種(マウス)でも見られるかを確認し、(3)より簡便かつ頑健にこの学習を生じさせる手続き(水温の効果および簡便法)を探る、の3点を目的としている。 本年度はこのうち、(1)と(2)、さらに(3)のうちの水温の効果に関する実験を実施する予定であった。(2)については、ほぼ当初の目的を達することができたが、(1)については実験室の使用可能状況等の面から実施できなかった。このため、次年度以降に予定していた(3)のうちの簡便法に関する実験を行った。具体的には味つき水で泳がせるというものである。また、予定通り、(3)のうちの水温の効果についても実験した。しかしながら、(3)についてはいずれの実験も作業を担当した学生の不慣れさのためか、味覚嫌悪学習を検出できなかった。 なお、本年度実施できなかった(1)、つまり水泳性味覚嫌悪学習におけるラットの系統差については、水泳ではなく走行を用いた実験を実施した。走行性味覚嫌悪学習については過去に行った複数の実験成果があったが、それを論文化するに当たり、追加実験をする必要に迫られたためである。また、砂糖依存からの剥奪を無条件刺激に用いた味覚嫌悪学習の実験も実施し、実証に成功した。これらの実験成果は水泳性味覚嫌悪学習の生理学的メカニズムの解明に資すると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に確認できたマウスの水泳性味覚嫌悪学習についてさらに確認する。具体的には、溶液測定方法の再吟味など方法論的な洗練化を目的とする。また、本年度は被験体には雄のICRマウス(比較的大型)を用いたので、より小型のマウス系統でも水泳性味覚嫌悪学習を検出する方法を探る。 本年度に実施できなかった水泳性味覚嫌悪学習におけるラットの系統差について検討する。また、ラットの水泳性味覚嫌悪学習に及ぼす水温の効果について、作業に手慣れたアルバイトに依頼し、再度検討する。簡便法の開発についても同様に、作業に手慣れたアルバイトに依頼して再検討する。 砂糖依存からの剥奪によって生じる味覚嫌悪学習は新発見であるので、この現象の追試と、成立条件を探る実験を実施する。
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次年度の研究費の使用計画 |
主として以下の費目で研究費を使用する。本年度の研究成果発表の費用(学会発表のための旅費や論文の英文校閲料金)、次年度の実験研究の被験体(ラットおよびマウス)代金、実験作業を行うアルバイト(作業委託)の人件費。
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