研究課題/領域番号 |
24530937
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 北海道教育大学 |
研究代表者 |
桑原 清 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (00178154)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | マカーレンコ:ロシア、ウクライナ / 集団主義:ニージニィ・ノヴゴーロド |
研究概要 |
8月12日~24日に、研究代表者が出張し、現地の研究協力者〔ニージニィゴーロド教育大学、E.Y.イラルトジーノヴァ准教授、S.I.アクショーノフ講師〕と打合せ会議を持ち、本計画の解明課題、資料調査の方針、などを確認した。 現地協力者の他に関連専門家として、マカーレンコ研究者のA.A.フローロフ教授・博士との接触を試みた。このうち、博士は、今まで書きためてきた資料集の編纂、論考多数を発表しており、マカーレンコ、訓育研究において多くの点で本申請者とは相違はあるものの、研究交流を行い、かつ資料提供を受けた。また、モスクワにおいては、ウシーンスキー教育学図書館の資料を閲覧、複写してきた。 これらを基礎に9月22日~23日に教育史学会第56回大会〔お茶の水女子大学〕で「ソビエト教育学における訓育論形成をめぐって~集団主義の形成をめぐって~」の口頭発表を行った。 また、10月1日~14日に、ニージニィゴーロド教育大学、同附属図書館、ニージニィ・ノヴゴーロド州立図書館、およびモスクワの国際マカーレンコ協会での資料収集・研究交流を行ってきた。 国際研究交流の一環として、平成25年3月28日~29日の「マカーレンコ生誕125周年国際科学・実践会議」で、”Вопросы, связанные с введением теории и практики Макаренко в Японии ~пересмотр советского социализма и теории и практики Макаренко ~”の口頭発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
8月および10月のニージニィ・ノヴゴーロドおよびモスクワ訪問による資料収集、研究交流は大きな成果があったと考える。マカーレンコ研究の第一人者であるA.A.フローロフ教授・博士およびフローロフ学派の若手研究者と知己を得ることができ、貴重な資料の収集と研究情報の提供を受けることができた。 また、直接、ゼミナール形式での意見交換を数度行うことによって、ロシアにおけるマカーレンコ研究のより深い理解とそれに対する批判的視座の伝達を行うことができた。そのことにより、互いの研究の深まりが進んだと考える。 真摯な研究交流の結果として、専門研究誌への投稿も勧められたり、モスクワにおける古文書資料の紹介、ウクライナの研究所への紹介の労もとってもらうことができた。 国際的なマカーレンコ会議〔学会〕への参加とその会議の組織者として、3月のニージニィゴーロド教育大学での国際会議に臨むこととなった。ロシアのみならずイタリア、アメリカ、ウクライナの研究者とも実際の研究交流を行うことができたのは、初年度としては十分な成果と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては、前年度までに培ってきたロシアおよび海外の研究者との研究交流の実績を基礎にして、ロシアにおける「古文書館」の手書き・タイプ印刷資料の入手およびウクライナでの実際の資料の入手、ウクライナでのマカーレンコの活動状況と当時の教育事情の確定作業を行いたいと考えている。 また、ロシア教育科学アカデミーの教育学・訓育史研究所のネフスカヤ教授との研究訪問・交流を予定している。 その他、マカーレンコの教育施設の生徒であった人たちと知り合ったこともあり、彼らからの聞き取りも行っていくことが有益と考えている。 前年度までに入手してきた資料の分析をもとに、早い時期に論文化し、和文および露文で発表する予定である。また、10月の教育史学会第57回大会の発表と可能であれば3月の北海道教育学会での発表を行っていきたい。 マカーレンコ教育学を正しく評価するためには、マカーレンコから大きな影響を受けた日本の教育学についても検討を始める必要がある。日本の教育学や外国の教育学へのマカーレンコの影響の相対的比較を行うことによって、マカーレンコの新教育および第二次大戦後の諸外国の教育状況を整合的に解釈することが可能となる。そのことにより、マカーレンコ教育学と現代教育学との関連〔連続・不連続という観点を持つことが必要か否か〕を明らかにすることができると考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
25年度の研究推進方策を実現するために、5月でのモスクワ調査・資料収集をベースにしながら、夏期におけるニージニィゴーロド教育大学でのゼミナール形式での研究交流・資料収集を予定している。 その他、ウクライナにおけるマカーレンコの教育活動の意味、それに対する当時の児童学者たちとの論争を丁寧に跡づけることによって、マカーレンコの集団主義をはじめとする一連の「理論」について分析を深めていきたい。 箇条書きにすると以下のようになる。 1)5月のモスクワの「古文書館」での第一次資料の収集、国立ロシア図書館、ウシーンスキー教育学図書館での文献資料収集。 2)8月~9月におけるニージニィゴーロド教育大学での研究交流・資料収集。 3)論文執筆および学会発表。
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