研究課題/領域番号 |
24530937
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研究機関 | 北海道教育大学 |
研究代表者 |
桑原 清 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (00178154)
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キーワード | マカーレンコ / 集団主義教育 / 新教育 / 自由主義教育 / ソビエト教育学 |
研究概要 |
平成25年5月4日~12日に、研究代表者が出張し、モスクワの「ロシア国立文学芸術文書館」におけるマカーレンコ直筆資料・タイプ原稿の読み取りと複写を中心に行い、その他「ロシア国立図書館」でのマカーレンコ関係博士論文の閲覧・複写を行った。そこでのテーマは、マカーレンコ集団主義理論の形成とその歴史的意義の探究であった。 とりわけ「ロシア国立文学芸術文書館」でのマカーレンコ直筆資料・タイプ原稿の読み取りと複写は、今までの研究では、必ずしも重要視されてこなかった事柄の解明に大きな役割を果たすものと考えている。「教育詩」に使用されなかったタイプ原稿は、トロツキーへの賞賛とスターリンに対する「俗物性」の指摘があり、マカーレンコがスターリンに対して批判的な意見を持っていたことを示す証拠とも言うことができる。 平成25年8月17日~9月1日にニージニィ・ゴーロド教育大学でのセミナー・研究交流を数回行い、マカーレンコ集団主義理論の形成の状況、およびその問題点を主として報告し、ニージニィ・ゴーロド州国立図書館での資料収集も含め、大きな収穫を得た。ここでは、マカーレンコ訓育論において「労働」が主要な位置を示していることを確認することができた。日本とロシアのマカーレンコ理解の決定的相違が明らかになったと考えられる。 その成果として、「教育史学会第57回大会」〔平成25年10月13日~14日:福岡大学〕において、「А. С. マカーレンコにおける集団主義理論の形成と労働原理にかんする考察」〔発表日10月14日〕を行った。 さらに、平成26年3月18日~31日に、平成26年10月開催予定の「マカーレンコ国際学会」の内容の検討と資料収集、学会における発表テーマについて打ち合わせを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年5月4日~12日のモスクワの「ロシア国立文学芸術文書館」におけるマカーレンコ直筆資料・タイプ原稿の読み取りと複写、および「ロシア国立図書館」でのマカーレンコ関係博士論文の閲覧・複写は、この研究を進めていく上で非常に大きな成果であった。 また、直接、ゼミナール形式での意見交換を数回行うことによって、ロシアにおけるマカーレンコ研究のより深い理解とそれに対する「問題点」「批判」を強く意識することができた。 マカーレンコのスターリンとの関係、日本におけるソビエト教育学・マカーレンコ理論の影響について、先行研究では明らかになっていなかったことを確認することができた。 こうした国際的な交流の結果、「国際マカーレンコ学会」理事への推薦も現在打診されている。こうした国際的なマカーレンコ関係学会への参加と会議の組織者として平成26年10月開催の「国際マカーレンコ学会研究大会」に関与することになった。こうした国際学会等の際に、ロシアのみならずアメリカ、ウクライナ、イタリア等の研究者と研究交流を行うことができたことは、十分な成果を残すことができたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては、平成25年度まで培い、蓄積してきたロシアおよび海外の研究者との研究交流の実績を基礎にして、ロシアにおける「ロシア国立文学芸術文書館」の手書き・タイプ原稿の補充的収集を行いながら、10月の「国際マカーレンコ学会研究大会」「教育史学会第58回研究大会」での発表を行いたいと考えている。 その二つの学会発表を基礎として、国際学会誌への投稿および国内学会への投稿を予定している。その他、今まで部分的に作成していた論考をまとめ、何らかの形で著書として世に問うことを考えている。 昨年の「教育史学会第57回研究大会」の個人研究発表では、マカーレンコ理論の日本への影響、日本の研究者・実践者の理解について問題提起を行った。今年度は、そうした視点から海外のマカーレンコ理論の影響力の有無と「非行少年問題」「矯正教育」についての比較研究を行うことを考えている。そうしたうえで、マカーレンコ理論・実践が有している歴史的意義・制約・限界を明らかにする必要があると考えている。このことは、現在日本で問題となっている「少年非行の問題」「厳罰化」を考える際に、一定の提言・意義を持っていると考えられる。
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