研究課題/領域番号 |
24530944
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
木村 元 一橋大学, 大学院社会学研究科, 教授 (60225050)
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キーワード | 学校受容 / 学校化社会 / 人間形成 / 地域社会 / 高度成長期 / 戦後社会 / 学校の戦後史 / 周辺 |
研究概要 |
本研究は、日本における学校の受容の時期とその条件や進行の有り様を解明することを目的とする。既にこれまでの研究で、小学校の定着に伴う課題や初等後教育機関の拡大などの分析を通して、1930年代がその起点に当たることを仮説的に示してきた。本研究ではその仮説をその後の歴史的な展開の中に位置づけ、1930年代から高度成長期までを一つながりのスパンとして10代が就学の対象として包摂される過程を学校化社会の一つの指標とし、学校受容化の過程の検討を加える。その際、教育制度の社会史という方法を用い教育の内側を描き、日本の学校システムの歴史的定着の特質を明らかにしようとするものである。 平成25年度は、学校化社会への過程の検討を広汎に視野を広げながら、かつこれまで収集してきた資料の整理をふまえながら進めた。平成24年度刊行した資料集の成果を批判的に検討することで全体の位置づけを検討し直した。並行して、この研究自体を日本の人間形成の変容の動向と重ねて把握するための基礎的な教育学や関連諸科学のカテゴリーの検討を集約的に進めた。 その結果、一条校をコアとした学校システムの周辺に注目し、こんにちまでをスパンを広げながら、研究協力者とともに人間形成と学校に関する基礎資料を収集しその整理をおこなった。歴史過程に注目し、地域社会における学校の成立の基盤という問題を捉えるための事例の探索、資料の収集を継続し、周辺の学校として検討を深めていけるものとして、専門高校、定時制高校、夜間中学校の検討を進めた。さらに奄美島嶼部の学校史料(聞き書き)を継続した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の最大の成果の一つは、これまでの資料の整理を進めこれの検討をふまえながら、他方、学校における人間形成の展開についての分析の枠組み研究を進める事でこんにちまでを含めた仮説的な展開の時期区分をつくりあげたことである。それにともない、資料のありようや担当者の事情も勘案しながらであるが、夜間中学校や朝鮮学校、定時制学校、専門高校などの検討を進め、位置づけを定めることができた。他方、軍との関係や東北の地域研究は平成25年度においては担当者や資料の問題などで修正にはいった。 平成25年度の具体的な検討は次のようである。①産業構造と学校・職安・労働市場との関連に着目したミクロレベルの研究の一環として基礎的な資料の収集、整理を引き続き実施した。②学校システムの周辺部に注目し、広く人間形成と学校に関する資料収集を行った。研究協力者の研究をふまえて専門高校、定時制高校、夜間中学校、夜間中学校を中心に検討を行った。日青協や青年学級などの資料の検討も行った。③兵庫県但東町の東井義雄の学級の卒業生に注目した検討をふまえながら学校化社会への移行のキーパースンとして東井実践の位置づけをおこなった。④有効な事例地の検討をふまえ周縁地として奄美大島の1950年代を中心とした聞き書きを実施した。高度成長期にかけての学校の状況について調査を実施した。⑤学校の教育実践を成り立たせる基盤として人間形成におけるケアの問題に焦点を当てて理論的な検討を総合的に行い、事例分析の上での枠組みの基礎を作り上げた。⑥これまでの学校研究や調査の知見をふまえて学校資料論を鹿児島大学教育学部主催の講演会で報告した。
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今後の研究の推進方策 |
学校化社会への過程の全体の関連資料の収集と整理分析を進める。広汎に視野を広げると同時にこれまで収集してきた資料の整理を本格的におこなう。それらをふまえた報告書の作成、ならびに成果の一端の刊行を目指す。 具体的には、平成25年度に得られた成果をもとにしながら、研究全体の構造を確認してそれぞれの分担と研究の全体のなかで平成26年の遂行目標を確認し、以下のように研究を組み替えながら①~⑦の検討を行う。①1930年代から70年代初頭までの学校―(職業社会・軍)の移行関係の全体像を捉えるための基礎的な検討をこんにちまで視野を広げながらおこない、全体のマクロな枠組みの構築にあたる。②その際に、人間形成の基礎カテゴリーの検討を教育学にとどまらない関連諸領域も視野に入れて検討を行い、整理のための枠組みをつくるための基礎的な検討を共同で実施する。その成果をふまえてケアを中核にした教育学のテキスト作成に反映させる。③高度成長期の進路の実態並びに対応について平成25年度の情報をふまえて検討を続ける。④これまでの成果をふまえながら、鹿児島・奄美、兵庫県但東町の地域社会の変化と移動に関わり学校がどのように変化したかの基礎調査を継続する。⑤夜間中学校、高等学校職業科(専門高校)、定時制、朝鮮学校など平成25年度に深めた検討を継続し、対象の基本的な対象の性格や課題を抑えながら中間的な研究をまとめる。⑥全体を集約しながら、この時点での成果を報告書に示すと同時に、仮説的な学校化社会への展開について見解を著書にまとめる。⑦その際に、こんにちまで射程においた学校化社会についての試論的な枠組みを提示しながら今後の比較研究をも含めた研究の課題を明確にする。
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