本研究は、「文検」修身科に、(1)制度史の解明、(2)試験問題の分析、(3)試験委員の分析、(4)受験者の分析、(5)「中等修身」の実態の解明の五つの作業課題の遂行を通して迫ろうとするものである。研究期間の前半(2年間)に(1)(3)(4)の作業を、後半(3年間)に(2)(5)の作業を主として行った。 以上のうち、(1)(2)(3)(4)については史料の収集に大変な時間がかかったが、ほぼそのすべてを収集することができた。とりわけ(3)の試験委員の分析については、長く試験委員を務めた友枝高彦、吉田静致、深作安文、宇野哲人の4名の著作をかなり細かいものまで収集することができた。ただし、(2)と(3)はかなりの相関関係があると考えられるが、その関係を深く掘り下げることは今後の課題として残っている。 (4)の受験者の分析については、受験雑誌に掲載された合格体験記をほとんど収集することができた。とくに『教育修身研究』についてはほぼ全冊をそろえることができた。しかし、その分析に当たっては、とりわけ昭和戦前期の史料がかなり大量にあることと、分析の前提となる日本思想史の研究が遅れ、今後の課題として残った部分がある。 (5)については、戦前の中等教育諸学校(中学校、高等女学校、師範学校、実業学校)の修身教科書のコレクションとしてはかなりの量を収集することができた。しかし、戦前に発行されていた総数から言えば、まだ2割にも満たない分量であり、今後さらに収集をつづけていく必要がある。 最終年度には、研究をまとめ諸学会で発表する予定であったが、(1)から(5)の研究の柱を総合することができず実現に至っていない。しかし、5年間の科研の助成は、この未踏の研究課題の推進に大きく寄与したことは言うまでもなく、研究の成果の発信に引き続き務めたい。
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