研究課題/領域番号 |
24530967
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
湯川 嘉津美 上智大学, 総合人間科学部, 教授 (30156814)
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キーワード | 学制 / 教育令 / 大学区教育会議 / 府県聯合学事会 / 学事諮問会 / 地方教育行政 |
研究概要 |
平成25年度の研究計画にしたがって、1880~1890年代の府県聯合学事会に関する史料調査・収集を行うとともに、これまでに収集した史料をもとに研究を実施し、成果の発表を行った。研究成果を示せば、以下の通りである。 第一に、府県聯合学事会に関する史料調査を北海道、秋田県、宮城県、福島県、栃木県、奈良県、島根県、徳島県、佐賀県の公文書館等で実施した。なかでも北海道、秋田県、福島県においては東北各県聯合学事会に関する新史料を発掘することができ、収集した史料の分析に取り組んだ。 第二に、昨年度に学会発表を行った「学制布告書の再検討」を論文にまとめ、日本教育史研究会編『日本教育史研究』第32号(2013.8)に掲載した。これにより「学制」研究に新知見を加えることができた。また、第一大学区教育会議の史料をもとに、「明治初期における幼稚遊嬉場・幼稚院の構想と展開」と題する論文をまとめ、第一大学区において幼稚院(幼稚園)や無謝学校(子守学校)、村落訓蒙場の設置が検討され、貧民層に対する幼児教育の普及が構想されていたことを明らかにした。 第三に、1882(明治15)年に開催された「学事諮問会」の研究を進め、教育史学会において「1882年の学事諮問会における府県答議-第二次教育令下の地方教育施策の実態-」と題する研究発表を行った。従来の研究では、第二次教育令は反動化・統制化の起点として評価されることが多いが、実際には「干渉」に必要となる地方の人材や財源に大きな問題を抱えていた。本発表では学事諮問会における府県答議の検討を通じて、同会がこの時期の文部省・府県にとって重要な意味を持ち、以後の文部省の対応、府県聯合学事会における継続的協議へとつながっていったことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
史料調査・収集は計画通りに進展している。昨年調査ができなかった北海道、宮城県での調査も実施し、新史料を発掘した。学事諮問会については、当初の予定にはなかったが、新史料の発見により、学事諮問会と連動して府県聯合学事会における協議がなされていたことが分かったため、先に学事諮問会の研究を進め、学会発表を行った。東北各県聯合学事会についても、新史料をもとに、分析を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
1890年代の文部省諮問会および地方部学事会議、地方部尋常師範学校長会議に関する史料調査を実施する。特に、関西地方では第三・第四地方部合同の学事会議を開催しており、史料の発掘と分析を通じて、その全容を把握し、中央・地方の教育行政の展開に果たした地方部学事会議等の役割を明らかにすることとしたい。
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