平成27年度の研究計画にしたがって、1890年代の府県聯合学事会(地方部学事会)の史料調査・収集を行うとともに、収集した史料に基づいて研究を実施し、成果の発表を行った。研究成果を示せば、以下の通りである。 第一に、1880年代の東北各県聯合学事会について、新たに発掘した史料をもとに、1884年の開設から1889年の第4回会議までを対象に協議内容の検討を行い、それが第二次教育令期から森文政期における東北・北海道地域の教育施策の展開に果たした役割と意義を明らかにした(「1880年代における東北各県聯合学事会の開催とその意義」『上智大学教育学論集』第50号、2016.3)。 第二に、1890年代に各地で開催された地方部学事会、地方部尋常師範学校長会議について、それが第二次小学校令下の初等教育政策の展開にいかなる役割を果たしたのか、文部省主催の学事会議との関連に着目しながら検討を行った。1890年代に入ると、地方部学事会は第二次小学校令の実施という課題を受けて、地方部内府県の協議による教育方針の一定化に重要な役割を担うようになるが、文部省でも地方部担任視学官を介して各地方部の意見を聴取し、政策実施に活用しており、第二次小学校令期の初等教育政策の展開に地方部学事会が果たした役割には大きいものがあったことが明らかになった(「1890年代における初等教育政策の展開と地方部学事会」教育史学会第59回大会発表、2015.9)。 研究期間全体を通じて、1870年代の大学区教育会議、1880~90年代の府県聯合学事会、地方部学事会、地方部尋常師範学校長会議の全容を把握することができた。そして、これらの府県の範囲を超えた広域ブロックの教育会議・学事会が地方教育行政に果たした役割および文部省施策に及ぼした影響を明らかにし、府県聯合学事会、地方部学事会の教育史的意義を解明した。
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