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2012 年度 実施状況報告書

ケイパビリティ概念の教育哲学的検討とそれに基づくキャリア形成支援プログラムの開発

研究課題

研究課題/領域番号 24530969
研究種目

基盤研究(C)

研究機関東京家政大学

研究代表者

走井 洋一  東京家政大学, 家政学部, 准教授 (30347843)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2016-03-31
キーワード教育哲学 / キャリア形成支援 / 生の哲学 / ケイパビリティ / 就労支援 / コミュニティ
研究概要

平成24年度は,①現実に即したキャリア形成プロセスの解明,②支援現場の現状把握,を中心に行った。
①については,A. センが提示したケイパビリティ(capability)概念の再検討を通じて,キャリア形成の見通しをもつことを試みた。センの示すケイパビリティは社会的な産物であることを認めつつも,能動的な主体(agent)としての人間に焦点化されており,それを継承したM. ヌスバウムも結合的ケイパビリティという概念によって外的条件とのかかわりにおけるケイパビリティを提示してはいるものの,それらがいかにして形成するのかという視点は十分に示されていない。そこで,生の哲学,特にW. ディルタイが捉えたG. W. F. ヘーゲルの初期思想にもとづいて,生の全体性がいかにして生起するのかを明らかにすることで,それを補完することを目指した。生の哲学が明らかにしたのは,生の全体から思考によって自己と他者の分裂が生起し,それが統一されずに困難となっていくこと,そして直観的な仕方で了解したままに「やってみること」で再統一が促されるが,それは必ずしも順調な経過を遂げるだけではなく,生が円環的に発展することから明らかなように,徐々に生起することが明らかになった。
②については,「しんじゅく若者サポートステーション」への継続的な訪問調査,K2インターナショナルなどの就労支援の現場の聞き取り調査,研究協力者である協同総研と連携して労働者協同組合が抱えるサポートステーションのスタッフによる座談会の実施,さらにイギリスにおける就労支援の現状などの調査などを通じて支援現場の実態の把握を目指した。これらから明らかになってきたのは,就労支援が困難を抱えている若者への支援だけではないこと,つまりそれを受け入れる社会やコミュニティへの支援を必要としていることである。この点は次年度以降中心的に検討すべき課題となる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成24年度はケイパビリティ概念を再検討し,生の哲学からの補完を行うことでキャリア形成のプロセスについての一定の見通しを見出すことができた。また,国内外への調査はもちろんであるが,協同総研と連携して地域若者サポートステーションのスタッフによる座談会を行うことで,キャリア形成支援現場の状況のより包括的な把握とともに,それらに共通する課題を見出すことができた。これらは申請時に予定していた研究計画のうち,初年次に行うことを予定していたものであり,おおむね順調に進展していると考えてよい。

今後の研究の推進方策

平成24年度の成果として,キャリア形成プロセスについてケイパビリティ概念の補完を生の哲学から行うことで一定の見通しを得ることができたこと,就労支援現場の状況の把握とそれらが抱えている課題について明らかにできたこと,をあげることができるが,特に後者では困難を抱えている若者への支援だけでなく,彼らを受け入れるコミュニティをいかに形成していくのかという点が課題となっていることが明らかになった。
ここから平成25年度以降に取り組まれる必要があるのは,キャリア形成のプロセスが自己と世界との関係においていかにして生起するのかという点を再度検討する必要があるということ,より具体的には,個々のキャリア形成プロセスと同時に,それを取り巻く世界がいかに変容(ないしは形成)しているのか,さらにはそうした世界の変容によって個々のキャリア形成はどのように展開するのかという課題を解明する必要があること,またそうした理論的研究と並行して,就労支援の現場で取り組まれている,個々人への就労支援はもちろんであるが,コミュニティ形成の実践を調査することである。さらに,こうした理論的研究,実践への調査研究に加えて実施する必要があるのは,本研究の課題の1つとなっている支援プログラムの開発である。この点については「しんじゅく若者サポートステーション」において「東京都若者社会参加応援事業」として実施される「若年無業者の為のパソコン講座「人っていいなプロジェクト」」に,平成24年度同様に関与することを通じて実施していきたいと考えているが,その際,上記の自己と世界の形成プロセスの解明が前提となったプログラムの開発を目指す必要がある。
平成25年度以降,この3点について研究を進める予定である。

次年度の研究費の使用計画

該当なし

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2013 その他

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] キャリア形成上の偶発的契機とその受容2013

    • 著者名/発表者名
      走井洋一
    • 雑誌名

      東京家政大学研究紀要(1)人文社会科学

      巻: 第53集 ページ: 23-29

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 言語活動と社会性の形成2013

    • 著者名/発表者名
      走井洋一
    • 雑誌名

      人間文化研究所紀要

      巻: 第7集 ページ: 81-89

  • [雑誌論文] 労協若者自立塾座談会(開催趣旨,コメント)2013

    • 著者名/発表者名
      走井洋一
    • 雑誌名

      協同の發見

      巻: 第246号 ページ: 6-11, 46-49

  • [雑誌論文] 労協地域若者サポートステーション座談会2013

    • 著者名/発表者名
      佐藤友彦,相川航太,鳥居明日香ほか
    • 雑誌名

      協同の發見

      巻: 第246号 ページ: 56-80

  • [学会発表] 生の全体性とキャリア形成

    • 著者名/発表者名
      走井洋一
    • 学会等名
      教育哲学会第55回大会一般研究発表
    • 発表場所
      早稲田大学
  • [学会発表] ディルタイ思想の教育学的アクチュアリティ~現代の心理学からの応答~

    • 著者名/発表者名
      走井洋一
    • 学会等名
      日本ディルタイ協会研究発表
    • 発表場所
      グランベル市ヶ谷

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公開日: 2014-07-24  

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