研究課題/領域番号 |
24530976
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 相愛大学 |
研究代表者 |
長谷川 精一 相愛大学, その他部局等, 教授 (40269824)
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研究分担者 |
越水 雄二 同志社大学, 社会学部, 准教授 (40293849)
北澤 義之 京都産業大学, 外国語学部, 教授 (90257767)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 言語 / 沖縄 / ブルターニュ / ヨルダン / アラブ |
研究概要 |
本研究は、沖縄、ブルターニュ、アラブ地域における言語教育と地域語との関係を分析し、各地域での考察の相互検討により、新たな比較教育史を追究しようとするものであるが、平成24年度には、上記の3つの地域において以下のような考察を行った。 まず、沖縄に関しては、標準語励行運動が盛んとなる1930年代後半~1940年代前半と、沖縄の言語の再評価が説かれるようになった1980年代後半においては、沖縄の言語についての評価は正反対の様相を呈するものの、地域のもつ独自の価値に対する積極的評価(「愛郷心」)が日本国家全体への求心性(「愛国心」)と親和的・同心円的なものとして語られていた点が共通することを確認した。 ブルターニュに関しては、19世紀半ばのフランスで5~16歳の就学率が20%未満の地域は、ブルターニュ半島の西端部だけだったが、世紀後半に学校が大きく増え、20世紀初頭にブルターニュ地方全体の就学率は60%台に達したこと、この間、1881年3月の法令により学校での地域言語の使用が禁止され、それ以降フランス語の教育がブレイス語を介さず、フランス語のみで行われるようになっていったこと、こうした直接指導の普及と徹底を通じて、ブレイス語の話者は減少の一途を辿り、20世紀前半には言語自体も、それを核とする文化活動も存続の危機に瀕したこと、を明らかにした。 中東・アラブ地域については、①一つが近代アラブ国家形成の中でアラブナショナリズムの果たす役割であり、初期の言語ナショナリズムの推進に関して中心的な役割を果たしたS.フスリーの思想と活動に関する研究②ヨルダンを中心に近代教育制度の拡大とアラビア語教育にである。③アラビア語の「標準語」と「地方語」の関係に関する視点であり、カルヴェなどの社会言語学研究を参考に、クレオール語の役割という観点から「地方語」の社会的位置づけ、という3点に関して考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に、本研究の初年度にあたる平成24年度においては、下図に示すように、まず各担当者が地域言語をめぐる歴史の流れについて、各自の担当する地域で対象期間を限定して、比較研究のベースとなる調査と考察を進める、と述べたが、上記の「研究実績の概要」に記したように、初年度としては、おおむねその目的を達成していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の2年めである平成25年度前半には、初年度の平成24年度と同一の方法で調査・考察を続け、平成25年度後半からは、それまでの調査・考察、及び、担当者相互の討議を踏まえて、対象とする各地域の人々が、近代学校教育システムの内部で進められる言語教育に対してどのように考え、それを受ける側として、あるいは、それを行っていく主体として、どのように行動していったのかについて、その人々の人間形成や日常生活の具体的な諸相に即して解明していくことを目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初、平成24年度に支出を予定していた金額からの残額は、平成25年度に使用する。
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