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2012 年度 実施状況報告書

コメニウス教育思想の再解釈に向けての基礎的研究

研究課題

研究課題/領域番号 24530977
研究種目

基盤研究(C)

研究機関広島修道大学

研究代表者

相馬 伸一  広島修道大学, 人文学部, 教授 (90268657)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2017-03-31
キーワードコメニウス / パトチカ / 開けた魂 / 哲学的人間学 / ベルクソン
研究概要

チェコ20世紀の哲学者ヤン・パトチカが、コメニウス研究と自身の哲学的・思想史的考察をとおして到達した「開けた魂」という見解を、思想史としてどのように記述しうるか「「開かれた心」の思想史的素描」(『広島修大論集』第53巻第1号、2012年9月、63~79頁)を発表した。ここでは、19世紀末から20世紀にかけてのヨーロッパの哲学思想において、フランスのベルクソン、ドイツを中心とした哲学的人間学そしてパトチカが、それぞれ人間存在および人間的理念として「開放性」をとりあげた文脈をおさえ、そのうえで「開放性」をモチーフとした思想史がいかに描きうるかを考察し、ソクラテスやプラトンに見られる「魂の配慮」の思想、新プラトン主義、キリスト教のとくに神秘主義思想における絶対者への開け、18世紀のドイツロマン主義の諸思想が注目されることを論じた。コメニウスは、新プラトン主義とキリスト教思想の双方に立脚したクザーヌスを受け継ぎ、ロマン主義のヘルダーに橋渡しする位置にあったと考えられる。また、パトチカがコメニウスをとおして考察した「開けた魂」は、ベルクソンの「開いた魂」が特権的個人を指すのに対して、教育をとおして接近可能な課題としてとらえられている点でも重要である。
当初の計画では、スウェーデンのノーショーピン市立図書館所蔵のフィンスポング・コレクションを閲覧する予定であったが、平成27年度に予定していた調査計画を先行させることとし、スペイン、ポルトガル、イタリアに調査に赴いた。スペインのサラマンカ大学図書館では、コメニウスが『開かれた言語の扉』を構想した際に参考としたバテウス(ベイズ)の『言語の扉』とその異本を調査した。ポルトガルのコインブラ大学ではコメニウスの『言語の広間』、イタリア・フィレンツェのウフィツィ美術館では、近年コメニウスの肖像という説が提示されたレンブラント画の肖像画を調査した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究計画を部分的には入れ替えたものの、「開けた魂」を思想史的文脈において考察するという本研究の主要な課題の一つを達成できた。
研究計画を入れ替えた文献調査についても、スペイン・サラマンカ大学でバテウスの『言語の扉』(1609年)のオリジナルを閲覧でき、さらにそれを基にした複数の異本の閲覧も行うことができたことは大きな成果であった。また、ポルトガルのコインブラ大学で閲覧することができた『言語の広間』(1659年)は、コメニウスが言語教科書を年齢段階に応じて3分割した際の重要な作品であり、これを閲覧できたことの意味は大きい。
この意味で本研究は「おおむね順調に進展している」といえる。

今後の研究の推進方策

引き続き本研究の目的を達成するため、具体的には、①国内外の教育思想史におけるコメニウスに対する評価の変遷、②コメニウス研究において十分に検討されていない動向をめぐる文献調査、③以上を踏まえたコメニウスの教育思想の再解釈の提示の3点の課題に取り組む。
これらの課題の遂行のため、a)国内のコメニウス研究、チェコ研究、教育思想、教育哲学研究者を必要に応じては訪ねるとともに、b)スウェーデンやバルト三国等の海外での文献調査、主としてチェコ及びドイツのコメニウス研究者へのインタビュー、c)諸学会(主として海外)での成果発表を行っていく。

次年度の研究費の使用計画

以下の3点を研究費の主要な使途とする計画である。
①ラトヴィア、カリニングラードの大学や図書館を訪問し文献調査を行う
②10月にオランダのナールデン(アムステルダム近郊のコメニウスが埋葬された地)で開催予定の国際学会に出席し研究報告を行う
③国際学会での発表のための英文校閲を受ける
④国際学会発表のためオリジナルがチェコ語やラテン語で書かれているコメニウス関係の文献の英語訳の作成を専門家に依頼する

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2012

すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] 「開かれた心」の思想史的素描2012

    • 著者名/発表者名
      相馬伸一
    • 雑誌名

      『広島修大論集』

      巻: 53巻1号 ページ: 63-79

  • [学会発表] Various Aspects concerning Civility and Education in Seventeenth-Century Europe2012

    • 著者名/発表者名
      相馬伸一
    • 学会等名
      International Network of Philosophers of Education (INPE)
    • 発表場所
      Addis Ababa University
    • 年月日
      20120815-20120818

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公開日: 2014-07-24  

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