本研究では、自然科学分野の教育研究活動への女性の進出について、19世紀後半から20世紀初頭にかけてのイギリスを事例に検討した。自然科学一般では、ケンブリッジ大学自然科学トライポス(優等卒業試験)の受験者、さらには合格後にアカデミズムに参入した女性科学者の属性とキャリア、研究上の業績を検討した結果、植物学、生理学、生化学等における女性の貢献と男性科学者との協働・対立の力学を明らかにした。また医学に関しては、女性医師のパイオニアの伝記や著作および米英の女性医師養成機関の記録を分析し、トランスナショナルな視点から医学教育と医師職におけるジェンダー境界線の変化を考察することの必要を提起した。
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