研究課題/領域番号 |
24530981
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 清泉女学院短期大学 |
研究代表者 |
長田 尚子 清泉女学院短期大学, その他部局等, 准教授 (90552711)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 職業実践 / プロジェクト活動 / 問題解決 / 教育方法 / キャリア教育 |
研究概要 |
本研究は、人文社会科学系学科における職業実践的プロジェクトの設計・評価を通じ、専門科目の学習効果を高める問題解決型の学習モデルの構築を目的とする。本研究プロジェクト活動では、専門科目の中に、その科目と関係のある職業的文脈を想定した活動を構成することにより、科目自体の学習成果を高めることを目指す。この点が、特定の職業における業務の遂行に必要な知識・技能を身につけることを目指すタイプの職業教育と異なる点であり、人文社会科学系学科にとって必要なアプローチとなる。この考え方に基づき、1)職業実践的プロジェクトの学習効果を高めるデザイン原則の導出、2)卒業生、企業へのインタビュー実施、3)職業実践的プロジェクトの事例調査、4)大学・短期大学における実践的検証と事例の蓄積、を研究項目として研究を開始し、平成24年度は、1)と2)を中心に研究活動を進めた。1)としては、認知科学、情報デザインの基礎に基づく広報紙制作活動のデザイン研究を継続した。本実践はサービス・ラーニングの知見を参考に継続的な改善を行っており、活動デザインを精緻化した上で実践を重ね、総合的な分析方法の検討と実践のまとめに入った。2)については、本研究の学習活動を経て就職した学生へのインタビューは少し先になるため、本務校の卒業生調査で取得したインタビューデータを用いて、グラウンディッド・セオリー・アプローチを用いたデータの分析方法と授業改善への示唆の得方を検討した。授業を履修している期間のインタビュー、卒業直後のインタビューも必要と考え、履修者へのインタビューも開始した。 以上について、研究経過の発表のために、職業教育研究、高等教育から職業生活への移行について研究が盛んなヨーロッパの学会(EARLI)をベースに関連研究者との意見交換、国際学会への発表論文の投稿を行い、平成25年度の学会に向けて2件の発表が採択された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
デザイン研究が順調にすすみ、年度ごとの学生によるリフレクションやレポートについてもデータとしての蓄積ができてきている。また、それらのデータの分析を始め、文脈のデザイン方法についてポイントが見えてきている。以上から、おおむね順調と考えている。当初想定していた中で、変更の必要性が生じたものとしては、次の2点がある。第一は、研究経過および成果の発表先学会である。本研究はサービス・ラーニングの実践研究の知見を応用した授業デザインを基本としている。そのためサービス・ラーニングに関する先行研究を調査し、サービス・ラーニングに関する学会への参加を予定していた。しかし、本研究で展開しているプロジェクト活動は問題解決型の職業活動であり、職業教育や高等教育から職業生活への移行をテーマにした研究がより多い学会や研究会への発表が重要であると考えた。このような経緯から、EARLIを中心にヨーロッパでの学会発表を検討することとした。現在平成25年度中に2件の発表が採択されている。第二に卒業生インタビューである。社会に出て働いている卒業生へのインタビューを想定していたが、本研究でデザインした活動を経験して社会に出た学生にインタビューし、データが取れるようになるまでには、就職先での仕事になれるまで少し待つ必要がある。このようなことから、履修中、卒業前などのタイミングでのインタビューも加え、学生がこのようなプロジェクトをどう捉えているのかについて、質的分析を深めていくこととした。
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今後の研究の推進方策 |
対象とする実践の中心となる広報紙制作活動についてはデータがそろってきているため、次年度もデザイン研究を続けながらデータの分析を進めていきたい。その中で、本研究のテーマとなっている職業実践的な活動のデザインを他の授業にも展開する。具体的には情報科学関連のウェブデザインの授業や業務システム開発の授業への応用を予定している。 データの分析については、分析の観点をより明確にし、本研究で実施した実践の記述方法を精緻化し、よりよい分析につなげる。そのために、質的研究を中心に、職業実践的な活動を記述する方法、それをもとに分析の観点を定義する方法を工夫する。具体的にはコンセプトマップの応用、Phenomenography研究で用いられる記述方法の活用を考えている。また、当初から予定している、テキストマイニングの活用も検討する。 研究成果の発表については、国際学会での報告を予定しているが、国内の関連学会への論文投稿の準備を開始する。
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次年度の研究費の使用計画 |
人文社会科学系学科における専門科目の中で、職業実践的な活動を取り入れたプロジェクト活動はまだ少ないのが現状である。当初米国における実践事例調査を予定していたが、職業教育の観点から考えるとヨーロッパのほうが先行していることがわかった。実践事例の検討も含めて平成24年度にEARLIのSIGへの参加を行い、そこでの研究者との交流と関連分権のレビューを行った。その成果として平成25年度は、EARLIの隔年の大会である、EARLI2013と授業実践研究の学会として以前から活動しているWALS2013にて発表する機会を得た。この2件の発表のための旅費と大会参加費用を50万円予定している。 データの分析については、今後もインタビューを継続的に行っていくため、文字の書き起こしとデータの整理のための謝金を20万円予定している。データの分析については、学生が書いたジャーナルやレポートの分析を開始するため、職業実践的な活動を授業で行うための基盤づくりとして、学生の活動を捉えるためのアンケートシステムの開発、情報発信のための環境整備として、40万円を予定している。
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