研究課題/領域番号 |
24530982
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 南山大学短期大学部 |
研究代表者 |
五島 敦子 南山大学短期大学部, 英語科, 教授 (50442223)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 国際研究者交流 / アメリカ / 知的財産権 / アメリカ大学史 / アメリカ成人教育史 / WARF / Engaged University |
研究概要 |
研究の初年度として、アメリカ高等教育史における知的財産権の分析枠組みを検討することを主たる課題として、8月に海外出張を実施し、研究交流、資料収集、文献研究を行って、以下の成果が得られた。 1.研究交流・研究者招聘:ペンシルバニア州立大学ではロジャー・ガイガー教授を訪問し、東北大学高等教育開発推進センター主催国際セミナー招聘講演「アメリカにおける大学史研究の動向と課題(東京会場、2013.2.12)」「アメリカにおける産学連携―現状と課題(仙台会場、2013.2.13)」を実施する企画に従事した。ウィスコンシン大学ではネルソン教授を訪問し、次年度招聘講演の打ち合わせを行った。研究交流の成果として、知的財産権をめぐる今日的葛藤を大学ガバナンスの歴史における同僚制とヒエラルキーに焦点をあてる分析枠組みが有効であることが確認された。 2.史料収集・研究発表:ウィスコンシン大学アーカイブズでは、特許開発にかかわった研究者、学長、学部長等の記録を収集した。史料の分析により、1940年代以降、E.B. フレッド学長が知的財産権を管理するウィスコンシン大学研究財団(WARF)の発展に寄与したことが明らかになった。分析の成果は、日本社会教育学会(2012.10.7)およびアメリカ教育史研究会 (2013.1.13)で報告した。 3.知識基盤社会の大学と社会の関係概念に関する文献研究:大学と社会を結ぶ“Engaged University ”という新しい概念が生まれ、タロワール・ネットワークという国際組織が設立された動向について、五島が論説を執筆した。連携研究者の間篠剛留は、「ラーニングコミュニティ論における『ラーニング』」と題して、知識の共有化プロセスをティントの議論に焦点をあてて報告した(アメリカ教育史研究会、2013.1.13)。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.先行研究の検討・国内研究会への参加 東北大学・大阪大学主催の高等教育関連セミナー、アメリカ教育史研究会・大学史研究会などの研究集会に参加し、国内外の研究者と交流を行って分析枠組みを検討した。次年度の海外研究者招聘の準備も、計画通り実施することができた。 2.アーカイブズ史料収集 ウィスコンシン大学では1940年代以降の史料の所在が判明し、入手した史料の一部を分析して研究発表を行うことができたため、計画以上の進展があった。国内史料は所在が特定できず、現地調査にはいたらなかった。 3.その他 Engaged Universityという概念に関する研究は、日本では未紹介であるため、新たな研究シーズの発見という点で、計画以上の進展があった。ただし、文献研究による動向紹介の段階のため、今後は事例研究による実証的研究が必要である。
|
今後の研究の推進方策 |
1.海外研究者との研究交流会の開催 ウィスコンシン大学ネルソン教授を大学史研究会第36回セミナー(中央大学後楽園キャンパス、2013.10.26に実施予定)に招聘し、大学のグローバル化を歴史的視座から探求する講演会を開催する。セミナーでは、明治期日本の高等教育についての講演を法学史研究者にも依頼し、比較高等教育史の観点から国際シンポジウムを実施する。シンポジウムの成果を深めるため、国内の大学史研究者に呼びかけ、事前・事後に研究集会を開催する。 2.史料調査・中間報告 国内史料の所在を特定するため、引き続き、史料調査を行う。戦前期にWARF所長が訪問したとみられる慶應義塾大学や理化学研究所などを対象にする。中間報告としては、日本社会教育学会第59大会の口頭発表の成果をまとめて、論文を執筆する。 なお、平成25年度は、海外研究者招聘と研究集会の費用が多額となるため、当初の計画であった海外調査(WARF関係者に対する面接調査)は実施しない。予算上、可能であれば、平成26年度に実施したい。
|
次年度の研究費の使用計画 |
24年度末近くに利用予定であった地方新聞のデータベース使用料の支払日が年度末前後となったため、25年度の研究費とあわせて使用する。
|