研究課題/領域番号 |
24530983
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研究機関 | 国立教育政策研究所 |
研究代表者 |
深堀 聡子 国立教育政策研究所, 高等教育研究部, 総括研究官 (40361638)
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キーワード | 米国 / 高大教育接続 / デュアル・エンロールメント / コンピテンス / 教育課程の体系化 |
研究概要 |
本研究の目的は、若者の高校から大学への移行を促す教育接続のあり方、教育課程の接続パターンを明らかにすることである。この目的にむけて、平成25年度には、高大教育接続において豊富な経験が蓄積されてきた米国における取り組みを整理し、いくつかの代表的なプログラムの訪問調査と専門家への聞き取りを行うことを計画していた。 平成25年度の研究実績として、次の3点を挙げることができる。 第一に、米国の「人材養成」「社会的公正」型の取組として急速に拡大しているデュアル・エンロールメントに関する現地調査(マサチューセッツ州高等教育局・ニューヨーク市立大学)を、5月に行った。 第二に、米国の「才能教育」型の高大教育接続に詳しい専門家に対する聞き取り調査(Thomas B. Fordham Institute)を、7月に行った。 第三に、日本の高大教育接続の取組事例として、キーコンピテンシーの概念に基づく実践を展開するSSHプログラムに注目して資料を整理するとともに、担当教員との研究会を7月に行い、3月の報告会に参加した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の文献・現地調査をとおして、以下の点が明らかになった。 米国のデュアル・エンロールメントの取組の主たる目的は、大学生に期待される学びの姿勢等を高校生に理解させることで、「社会化の先取り(anticipatory socialization)」を促し、大学入学後の適応を早めるとともに、社会経済的な事情によって大学進学を早期に断念する高校生に再考を促し、進学に向けていざなうことであった。米国の才能教育については、連邦・各州政府が学力の底上げに注力するあまり、才能児が必要とする教育の特別措置に対する社会的支持が薄らいでおり、十分な予算措置が取られない中で、組織的・体系的な取組が発展していない状況が明らかになった。これらの状況が示す通り、米国でも高大教育接続の取組は、教育課程の接続という観点からは、組織的・体系的に展開されてこなかったと考えることができる。 一方、「大学・職業レディネス」(コンピテンス)の獲得を目標に掲げるコモン・コア州スタンダード(2010年完成)を実質化させる取組が各州で着手されており、初等・中等・高等教育段階を包摂する「K-16」の枠組で、協議会や作業部会が設置されてきている。この教育の新しい枠組の中で、デュアル・エンロールメントを初めとする既存の高大教育接続の取組がどのように方向付けられていくかを検討することが、平成26年度の研究課題であることが明らかになった。さらに、コンピテンス型の教育課程の編成や接続については、どの教育段階でもほとんど経験が蓄積されていないことから、その先駆的取組として、2年制大学と4年制大学の接続で実績をあげている米国ユタ州のチューニングの事例に着目して、高大教育接続への援用の可能性を検討する方向性が明らかになった。
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今後の研究の推進方策 |
1.現地調査(米国) ユタ州チューニング調査(6月)、およびマサチューセッツ州高等教育局とニューヨーク市立大学のデュアル・エンロールメントのフォローアップ調査(12月)を実施して、コモン・コア州スタンダードの実質化が進む中での高大教育接続に係る全米的な動向の把握に努める。 さらに、コンピテンス枠組に基づく教育課程の体系化の方法論に関する理解を深めるため、米国より専門家を招聘し、日本のカリキュラム・デベロッパーとのワークショップを開催する。 2.現地調査(日本) キーコンピテンシーの概念に基づく実践を展開するSSHプログラムにおける教育課程の体系化の取組に引き続き注目し、その成果と課題を整理する(質的検討)。本取組については、高校教育・進路指導の専門家を研究分担者に迎え、共同で取組む。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究課題は平成24~26年の3年計画で遂行しているが、初年度の平成24年度は文献研究を中心に遂行し、研究の焦点化させることに努めた。その結果として、現地調査のために計上した経費分を平成25年度以降に繰越すことになった。、 研究代表者の活動としては、平成26年度には2回(各10日程度)の米国における現地調査を予定している。それぞれ、50万円程度の海外旅費が必要である。国内旅費としては、高等教育学会、大学教育学会での学会発表・情報収集のために、それぞれ5万円程度の国内旅費が必要である。研究分担者の活動のために、分担金10万円を分配する。研究代表者と研究分担者が共同で取組む活動として、米国より専門家を招聘してワークショップを開催するために招聘旅費として50万円程度、会議開催経費(講演謝金、同時通訳、会場)として50万円程度が必要である。また、印刷費・その他として、20万円程度を支出する。
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