研究課題/領域番号 |
24530987
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 福島大学 |
研究代表者 |
中田 スウラ 福島大学, 人間発達文化学類, 教授 (20237291)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 学習コミュニティ / 東日本大震災 / 地域再生 / 地縁組織 / 生涯学習 / 社会教育 |
研究概要 |
東日本大震災以降、東北の各地域社会が従来から抱えていた課題の緊急性は増している。「平成の大合併」と言われた地方分権化政策により示された市町村合併と自立的自治体経営の確保を目指す地域コミュニティの再編・形成方策は、東日本大震災を経てその真価を問われている。本研究は,こうした課題に応え、東北が大震災から地域再生を図る上で、自立的・協働的市民の成長が急務であることを踏まえ,それを推進する市民参画型生涯学習施設の可能性を地縁組織(地域住民組織)との連携の観点から追究する。 上記の視点に基づき、関連する先行研究の把握と整理を継続的に展開した。 続いて大震災後の地域状況、行政施策・教育関連施策の動向を概観する資料整理を開始した。 加えて、東日本大震災が東北とくに福島県の地域生活にどの様な影響を与えたのか、そしてその影響下で子ども・青年・市民がどの様な課題を抱えているのかを把握する現地踏査に着手した。こうした課題把握は、大震災後の地域再生の過程で重要な役割もつ地縁組織がどのような状況にあるかを把握する上で不可欠な作業となる。さらに、地域再生を支える生涯学習施設が担うべき機能を市民を中心とする学習コミュニティの形成と再生に求めようと本研究の観点からも上記の作業は重要である。 具体的には次のように研究を進めた。(1)報道・出版資料を中心に原発震災が教育活動に与えた概況の把握、(2)双葉八町村を地域事例として措定し、子どもや青年・成人(保護者)等の教育・学習機会の現状と復興教育をめぐる諸課題等の把握、(3)避難生活が長期化している仮設住宅での生活状況の中で子どもや保護者が抱える諸課題の把握、(4)教育復興をめぐる要望等の把握等。加えて、教育委員会関係者からのヒアリング調査、双葉郡の子ども・保護者を中心とする「子ども会議」、復興教育シンポジウム、「OECD東北スクール」等の情報収集に努力した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
東日本大震災と原発震災の影響が大きく、いまだその影響が現在進行形の様相を示している東北とくに福島では、大震災後の行政動向・教育施策の動向に関する資料収集とその整理はこれまでほとんど成されていない。いわば、まだ混乱状況にあるとも言える。比較的組織が機能しているはずの学校教育の状況に関しても、避難が継続している地域を初めてして段階的に状況は変化し続けており、そうした避難者を受け入れている地域も結果的には状況変化は継続していると言わざるを得ない。 子ども達の避難のプロセスがどうであったのか、教育行政はどのような対応を取っていたのか、避難者の動向は現在ではどうなっているのか、地域の復興政策はどう計画され始めているのか等々に関する資料収集とその整理は予想以上に膨大なものとなっている。こうした基本調査は、今後の研究推進の基盤となる重要なものである。また、時間が経過するとともに、こうした情報収集は今後難しくなることが予想されるため、情報が風化・消失する前に精力的に収集することが必要であった。
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今後の研究の推進方策 |
東日本大震災が地域に与えた影響は大きく、特に、福島は原発震災の影響は現在進行形を未だ示している。各地域は混乱状況を脱し切れておらず、震災後の2年間余りをどのように対応してきたか、教育政策動向はどう展開されたのか、教育・学習活動はどのような影響を受けてきたのかを総括的に概観できる資料はなされておらず、こうした基本資料の作成から本研究を始める必要があった。そうした資料作成を、まず報道・出版関係資料を収集しながら開始してきた。そうした総括的に概観する資料の収集と整理には、地域がいまだ混乱状況にあることもあり、膨大な時間とエネルギーを必要となっている。そのため、そうした基本資料をまず作成しそれをベースに現地踏査を行う予定であったが、それを十分に展開することが困難となった。結果的に次年度の研究計画内容にそうした点を引き続き補うこととし、次年度使用額を残した。 こうした現地踏査を継続させるとともに、地域再生に着手する生涯学習・社会教育実践の地域事例を選定を進めるとともに関連資料の収集を進め、現地踏査を展開する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は次の点を中心として展開する研究に充当させる予定である。①報道・出版関係資料を収集しながら開始している東日本大震災と原発震災がもたらしたこの間の影響とそれに対応して展開された教育行政の動向等を総括的に概観する資料の収集と整理等に充当させる。②そうした基本資料の作成を基礎に現地踏査を進め、それに必要とされる旅費、人件費・謝金等に充当させる。③あわせてそうした資料収集・整理および分析等に必要とされる物品費等に充当させる。 また、当初予定の次年度研究計画を同時に推進させ、地域再生に着手する生涯学習・社会教育実践の地域事例の選定を進めるとともに関連資料の収集を進め、現地踏査をさらに展開する予定である。事例研究の候補としては、富岡町生活支援センターとして機能している「おだいがいさまセンター」がある。同センターは、情報誌の発行・FMラジオ局「おだがいさまFM」・「おだがいさま工房」・「おだがいさまファーム(畑隊)」等の活動を展開し、避難者の共同化を進めるとともに地域再生に向けての協働的学習活動を展開しており、地域の再生を担う学習コミュニティとしての可能性を秘めている。そうした活動のみならずその他の多様な学習実践の発掘を継続的に推進する。
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