研究課題
本研究は,幼児が参加する文化的実践としての保育活動に注目し,日本の保育に特徴的にみられる保育者による数量支援の構造と幼児の数量発達の関係を明らかにすることを目的とするものである。平成25年度は,以下の3点を行った。第1に,幼稚園の4歳児クラスを対象に保育活動の縦断的観察を行った。保育活動の自然観察は,月1~2回ずつ,午前10時から12時まで(お弁当の時間まで)実施し,保育活動の流れと保育者および幼児の数量行動をフィールドノートに記録した。また,補助としてビデオカメラでの撮影も行った。第2に,観察対象となったクラスの4歳児29名を対象に,Child Math Assessment (CMA)の短縮版を個別に実施した。CMAは,幼児の数量能力の総合評価を目的に作成され,5領域(数,算術,空間幾何,測定,パターン)で構成されている。このテストは幼児の数量能力を総合的に評価することが可能な優れたテストだが,個別面接の所要時間が1名につき約40分と長く,実施の負担が大きかった。本研究では,Prentice Starkey (WestEd, 元UC Berkeley教授)らが近年開発したCMAの短縮版を,日本人の幼児向けに修正した日本語短縮版を作成,実施することで,各幼児の負担を20分に軽減した。CMAにおける幼児の回答と方略は,正誤判定と分析に用いるためビデオ撮影した。第3に,日本の保育の文化的特徴をより明確に把握するための比較文化的資料として,ニューヨーク州の大学附属幼稚園において,保育活動の観察および保育者へのインタビューを行った。
2: おおむね順調に進展している
計画にしたがい,4歳児クラスにおいて保育活動の縦断的観察および数量能力評価を実施した。
平成25年度に観察対象となったクラス(平成26年度には,5歳児クラス)において,引き続き保育活動の観察を行う。観察対象のクラスの幼児を対象に数量能力評価(CMA短縮版)および保育者への面接も実施する。26年度後半には,これらのデータの比較検討および総合的な検討を行う。
平成26年3月21日~23日に京都で開催された日本発達心理学会第25回大会への参加に関わる経費である。学内の事務処理の関係で次年度使用額に含まれたが,実際には99,468円のうち87,300円(内訳:旅費74,300円,大会参加費13,000円)は,年度内に使用済みとなっている。実際の次年度使用額12,168円については,データ整理・分析のために必要となるPC関連消耗品および文具を購入する。
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保育学研究
巻: 52(1) ページ: 19-30
青山社会情報研究
巻: 5 ページ: 1-10
初等教育資料
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