本研究は、社会教育の中心施設とされる公民館、とりわけ、戦後初期公民館(1946年から1953年の公民館)に注目し、その実像をより精緻にとらえ、その具体的諸相を明らかにすることを目的としている。とくに、法人公民館に注目し、その設立・運営の実態を歴史的に明らかにすることを目的としている。 こうした研究目的を達成するため、今年度は、岐阜県内に設置されている(いた)法人公民館の「寄附行為」、「設立趣意書」、「事業報告書」、「予算書」、「決算書」等を収集・整理することができた。 総じて法人公民館の設立にあたっては、政令第15号により戦前・戦中の区(部落会)で保有できなくなった山林等の区有財産の処理をめぐって、いわば区有財産管理の「隠れみの」として法人立の公民館が設立された経緯が明らかとなった。また、戦後初期における法人公民館においては、生産復興・産業指導・医療・福祉・保健・生活改善等、郷土社会の復興や人びとの生活福祉に関する活動が多彩に繰り広げられた。こうした実践の中には、自らのリアルな生活要求を満たしてくれる場として公民館を捉えて、多種・多様な学習・教育活動を生み出していく住民の姿が見られる。一方で、区有財産管理の「隠れみの」として法人公民館が設立された経緯があるにしても、他方で、その実践の中からは、初期公民館が、その実質的機能において地域の現実や住民のリアルな生活要求に関わる民主的な社会教育実践を生みだす基盤を構築するものであったことが確認できる。そして、こうした過程に、自らのリアルな生活要求を実現するものかどうか、自らの生活向上・生活改善を保障する制度であるかどうかという視点から公民館の制度を選び取り、自らの生活の論理によってそれを活用し、自らの生活向上・生活改善を実現していこうとする住民の主体的・能動的な姿を垣間見ることができる。
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