研究課題/領域番号 |
24530997
|
研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
篠原 清昭 岐阜大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (20162612)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 台湾 / 教育 / 民主化 |
研究実績の概要 |
平成26年度については、主に80年代と現代の学生運動の焦点をあて学生運動が台湾の民主化に与えた影響について調査分析した。詳細は以下のようです。 1.80年代の大学闘争と90年の学生の民主化運動(「野百合学生運動」)を対処として、その戦略と戦術に関して分析した。その結果、当時の学生運動は社会的評価を受けたといえるが、実際には政府サイド内の李登輝による政治改革をサポートする結果となったと解される。しかし、学生運動による学生集団の民主化意識はその後の台湾の民主化改革につながっていった。 2.2014年3月~4月に生じた学生集団による台湾立法院占拠運動(「太陽花学運」)を対象として、その戦略と戦術に関して分析した。その結果、この学生運動は社会の支持と高い評価を受け、実際に国民党政府に圧力を与え、政策の変更を可能とさせ、さらにその後の台湾社会の民主化運動に機能したと評価される。特に、SNS(ソーシャルネットワーク・サービス)を使ったその戦術はE-デモクラシーによる新しい民主化の可能性を示したと評価される。 以上のことから、台湾の民主化は初期においても現在においても、学生運動を起点として社会全体の民主化を促したとみることができる。その理由には、学生運動が特定の利益団体に属さず、政治的、経済的に自由な立場で、自分たちの理想とする社会改革イメージをもち、それを純粋に求めたという点がある。さらに、それが学習者である学生の社会運動であるという点において、市民性教育の面で未来の社会の形成者を育てたという教育価値がある。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究成果を以下の論文2本さらに研究会報告にまとめることができた。
「台湾における学生運動と第二の民主化‐太陽花学生運動の戦略と戦術と思想‐」『岐阜大学教育学部研究報告(人文科学)』第63巻1号 2014年 115頁~136頁。 「台湾の民主化と学生運動‐『野百合学運』(1990年)を中心として‐」『岐阜大学教育学部研究報告(人文科学)』第63巻2号 2015年 121頁~140頁。 「台湾における学生の民主化デモ‐318太陽花学運事件‐」京都大学地域研究所「相関地域研究」プロジェクト研究会 2014.6.8 於京都大学
|
今後の研究の推進方策 |
「教育における民主化」ではなく「教育による民主化」に焦点をあて、教育実践それ自体の民主化運動的価値を検証する。具体的には、「太陽花学生運動」の成功は、学生たちがこれまで学んだ政治的リテラシーを中心としたシティズンシップ(「公民資格」)教育にあるという仮説にもとづき、台湾の公民教育の歴史的分析と現在のカリキュラムの学習価値を分析する。 さらに、本年度がこの科研費研究の最終年度であることから、全体をまとめ、刊行助成を受けることを目標にしたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
台湾現地の調査旅費が予定を下回ったため。
|
次年度使用額の使用計画 |
渡航費のための補填
|