本年度の研究成果として①日本デューイ学会第57回研究大会シンポジウムで提案した内容を「デューイ実験学校の統合的なカリキュラム-当時のアメリカ・カリキュラム論の文脈からの一考察-」という小論にまとめ、その論文が『日本デューイ学会紀要』第55号に掲載された。②日本デューイ学会第58回研究大会で「デューイ実験学校における探究的な学習」というテーマで個人研究発表を行った。③現在の日本における探究的・協同的な学びについて、本研究の成果を踏まえながら、『初等教育資料』(2014年8月号)で「探究のプロセスの質を高める協同的な学習」という論説を書いた。 本研究の目的は、探究的・協同的な学びに基づく学校文化の創造と教師の実践的力量形成に関する史的考察であった。本研究では、デューイ実験学校の具体的な実践事例を考察することにより、探究的・協同的な学びがカリキュラムのすべての領域で機能していたことを明らかにした。子どもの探究的・協同的な学びを実現するためには、まず、教師が探究的・協同的でなければならない。そのような学校の組織と環境が整えられ保障されることの重要性について検討した。デューイ実験学校では、教師の知的自由と知的活動を尊重すること、教師が自分の教育活動を個人的・協同的に反省し、それに応じて教育活動を修正し改善することが認められていた。なぜなら、民主的で協同的な組織が教師の知的活動を促進したからであった。しかし、知的自由の中心には知的責任が必要であり、教職の専門性への準備は知的責任の習慣を育てることを含まなければならない。すなわち、教師が教育の機敏な思慮深い研究者となるためには、自らの教育活動について観察、洞察、反省する精神的習慣を形成することが求められたのである。このような研究成果を大学、大学院の授業及び現職教員の研修等で利用してきたが、今後も活用するために最終的に報告書にまとめた。
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