本研究では、以下の3つの課題に関して、実証的な研究を実施し、学会発表及び大学紀要への学術論文投稿によって、その成果の一部をすでに発表している。解明できた成果は、第一に、中学校及び高等学校教員免許状「職業指導」の発行に関して、課程認定を受けている大学・学部の養成上の特徴を解明した。第二に、戦後の「職業指導」に関するの設立経緯として、中学校及び高等学校の教科・科目と免許法との関連について、その設置経緯に関する事実確認とその意義について検証した。第三に、学校のキャリア教育・キャリアガイダンスの実態調査の一つとして、高等学校の専門教育とりわけ総合学科における専門的職業に関連する分野の教育を教育課程分析を実施し、その後の進路(進学・就職等)との関連を検討した。 以上の成果によって、戦後の中等教育段階において「職業指導」は、他の教科とは異なる独自の存在となっていることが明らかになった。職業教育やキャリア教育の必要性が強調される現在においては、教員免許法に規定される「職業指導」を見直し、再利用を含めた扱いが高校教育現場では有効であることが示唆される結果となった。進路指導の取り組みが現場の教員のいわゆる経験知だけに頼ることなく、教員免許法の趣旨に基づいた教育実践となることは、現代の若者の進路選択・決定に成果を上げると期待できる。この分野の専門性を高めた教員を育成するためにも、今後の進路指導・キャリア教育には、教員免許「職業指導」の活用が有効であることが解明された。
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