研究課題/領域番号 |
24531006
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
久井 英輔 広島大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (10432585)
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キーワード | 社会教育 / 生活改善 |
研究概要 |
2013年度は第一に、研究計画における①(生活改善運動推進団体に関する研究)をすすめた。具体的には、2012年度の研究作業から引き続いて、大正期の商工行政によって推進された「世帯の会」(しょたいのかい)の活動実態の解明を行った。「世帯の会」については、中嶌邦によって活動のごく概要は既に紹介されている。しかしそれらの先行研究では参照された史料の範囲が狭く、背景となる商工行政の動きに関する検討にも欠けていた。また、事業への参加者や新聞・雑誌メディアなど、同時代の視線からこの活動がどのように捉えられていたかという検討もこれまで欠けていた。そこで本研究においては新聞記事、団体機関誌、農商務省関係資料、農商務省関係者の伝記・自伝・聞取記録などを手がかりにして解明した。また、当時の日用品小売をめぐる商工行政の動きを背景として、この団体の設立が、新中間層の消費行動の変革を目指す動きの一環として取り組まれたことを明らかにした。他方で、生活用品などの展覧会においてこの団体が、同時期に活動していた他の生活改善関連団体と同様、新中間層上層を念頭に置いた活動傾向を持っており、それに対する同時代の事業参加者、メディアに批判的な見解があったことも指摘した。 また第二に、研究計画における②(民間企業による生活改善事業の検討)について、大正期の商業的婦人雑誌における日常生活知識関連の記事・論説や、生活知識に関する講習会・講演会、展覧会などの催事、読者系列化策やそれから展開したセツルメント事業、読者グループの動きなどに関して、基本的な史料の収集を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、戦前日本の都市における生活改善運動に関する従来の研究が、検討対象時期や推進主体を狭く限定していたことに鑑みて、より実態に即した歴史像を構築しようとするものである。 当該年度の研究計画は、これまで注目されてこなかった世帯の会の活動実態を明らかにするとともに、民間企業による生活改善事業に関する動向、とくに商業雑誌の動向について、記事・論説や催事に関する基本的な史料の収集を行うことにあった。研究作業としてはこれらの大半を年度内に終えることができたため、当該年度の研究進捗状況は、概ね順調と判断される。
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今後の研究の推進方策 |
2014年度は、第一に、前年度から実施している、民間の生活改善事業、特に商業婦人雑誌について資料収集を継続し、これらの雑誌が有していた生活改善の知識を伝えるメディアとしての機能、また人々を生活改善の実践へと動員していく機能に注目して、同時期の他の生活改善運動との異同を明らかにする予定である。第二に、2012,2013年度において行った多様な生活改善運動推進団体の実態解明について、若干の補足的な史料調査を行う予定である。
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