1. (研究目的)初年度及び昨年度の都道府県教育委員会の学力政策に関する事例調査等を踏まえ、最終年度は、市町村教委の学力政策の実態と課題及び学力政策の促進要因及び阻害要因等の分析を行った結果、次のことが明らかとなった。 2.(研究成果) ①約7割の市町村教育長が都道府県教委の学力政策の内容等が公立学校教職員に十分に伝達されているとしたものの、約3割の教育長はそうは認識していない。都道府県教委の学力政策が教職員に伝達されていると認識されている市町村ほど、市町村の子どもの学力は高い。②約6割の市町村教育長は、都道府県教委が独自に実施している学力調査を市町村の学力向上を図る上で有益であると認識している。③都道府県教委と市町村教委との間に学力政策の方針等をめぐる一致度が高い市町村ほど、その市町村の子どもの学力は高い。④約半数の市町村教育長が都道府県教委は市町村教委に学力政策をめぐって明確な方針や指示を出していると認識している一方、約2割の市町村教育長は都道府県教委は市町村教委の自主性に任せようとしている。⑤約5割強の市町村教育長は都道府県教委の学力政策は市町村の子どもの学力向上を図る上で有益であると認識しているものの、約4割の教育長はそう認識していない。また、都道府県教委の学力政策の効果性を認めている市町村ほど、市町村の子どもの学力は高い。⑥現時点での分析では、子どもの学力を規定する要因として「家庭要因(しつけなど)」「人口規模」「就学援助受給率」等が挙げられる。 3.研究の意義と課題 本研究を通して、都道府県教委と市町村教委の学力政策の定着度と効果性及び学力政策の定着を規定する要因の分析並びに評価方法等について分析できたことは大きな意義を有する。今後は、学力政策の評価方法(モデル)を考える場合、政策の時間軸と学力政策の効果を規定する多様な要因を考慮する必要性がある。
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