研究実績の概要 |
第4年度において残された課題は、社会福祉学との接点を見出すことであった。さらに、地域福祉を考慮に入れた場合、コミュニティ再生・まちづくりの議論との接点を見出すことも必要となった。そのために今年度は、地方創生、地域づくり、都市計画の文献を収集し、これまでの研究の成果を踏まえ、論点の整理を行った。調査は、社会福祉問題解決の先進地である大阪府豊中市、島根県松江市を対象に実施し、社会教育と社会福祉の接点を探った。 4年間の研究全体を通じて解明された点は、次の三点である。①一つは、社会福祉との接点については、予防的な地域福祉との関連が深く、予防的社会福祉活動を実行するためには、社会教育とくに公民館の役割が大きいこと、②二つには、従来の社会教育・公民館活動と社会福祉活動の領域の線引きが曖昧になってきており、両者の中間的な領域・居場所が求められるようになってきていること、③三つには、都市近郊団地にみるソーシャル・キャピタルの形成は、コミュニティ再生、各種相談事業、健康・予防活動、社会教育・公民館活動が一体的に展開しており、そのための空間・事業の創出が鍵となっていること、が明らかになった。 研究成果報告については、日本公民館学会を中心にして学会報告・シンポジウムを行った。研究成果の一部を「日本の都市近郊団地にみる社会教育と社会福祉の結合」(松田武雄編『社会教育福祉の諸相と課題』2015 大学教育出版)として発刊した。あわせて本研究の知見を生かして「新たな公民館ビジョンを求めて」(日本公民館学会『日本公民館学会年報』第12号 2015,11 6-18頁 依頼原稿)を執筆した。
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