本研究は、人口減少地域における地域資源を機能させる諸要素・条件を日韓比較によって抽出し、学校統廃合に代わる地域共生型学校モデルの探究を目的としている。 両国とも、少子化、都市化、非都市部の過疎化が深刻となり、それに伴って学校の小規模化が進行し、学校統廃合が大きな政策課題になっている。だが、小規模校の取組みでは、A自律学校:制度 B教育福祉:政策理念 C小規模校を支える民間運動の存在、の3点の相違点が見出された。 日本は、均一のスタンダードを設定して、学区という圏域拡大によって適正規模化を図っているが、韓国は、統廃合に対して財政支援を行うと同時に、小規模校の活性化策にも取組んでいる。その代表的なものに、田園学校事業(2009~2014)があった。これは、先進事例調査を踏まえ、農山漁村の負の側面だけでなく、豊かな自然環境や社会関係資本が持つポテンシャルに着目して事業化したものであった。そこで、田園学校事業に着目し、①中央・地方政府への聞き取り調査、②田園学校の実態調査を行った。 ①では、学校自由化策を進めて地方や学校に権限を委譲するとともに、自由化策によってもたらされる地域や階層間格差を是正するために「教育福祉」を政策原理に据え、教育予算の増額を図って、小規模校対策に取組んでいることを明らかした。 ②では、田園学校に選定された忠清南道洪城郡洪東面の洪東中学校を分析対象とした。教職員や校区住民への聞き取り調査から、中学校を拠点として、地域・住民がメントリング活動を担うなど、教育・福祉機能を分かち合うコミュニティが形成されつつあり、生徒数も増加していた。同事例において、A、Bが有効に機能していることが認められた。さらに、A、Bを具現化する要因として、a教育、地域づくりの理論的・精神的支柱-オルタナティブスクールの存在 b豊かな地域人材:帰農・帰村者 c教職員の力量、が抽出された。
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