研究課題/領域番号 |
24531016
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研究機関 | 福山市立大学 |
研究代表者 |
高月 教恵 福山市立大学, 教育学部, 教授 (40270011)
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キーワード | 幼保一体化 / カリキュラム / 保育実践 |
研究概要 |
本研究は、0歳から小学校入学までの子どもの保育を一貫したものと捉え、幼保一体化における統一した保育実践をふまえたカリキュラムを構築する予備的研究である。今日における幼保一体化カリキュラムを検討するために、(1)幼稚園・保育所(園)の子ども観、(2)従来の幼稚園・保育所(園)における保育実践・カリキュラム、(3)近年の保育実践研究(現職研修)から保育実践・カリキュラムについて考察する。これらの歴史的、実証的研究は、今日の幼保一体化における政策課題を検討する上でも、幼保一体化のための統一した保育実践をふまえたカリキュラムの構築を検討する上でも、重要な示唆を与えると考える。 (1)幼稚園・保育所(園)の児童観:昨年度に引き続き、石井十次の事業を物心両面で支えた大原孫三郎(倉敷紡績社長、1880~1943)の経営理念(労働理想主義と共同作業場)に焦点をあわせて、保育所「若竹の園」の創設(1925年)について考察を深めた。その結果、大原孫三郎は「働く母親の人権(労働権)」と「子どもの最前の利益」を保障し、「養育の社会化」を願って保育所を設立したことが明らかになった。論文にまとめ、社会思想史研究者の安川悦子と共編で著書(論文集)を出版した。 (2)従来の幼稚園・保育所(園)の保育実践・カリキュラム:昨年度に引き続き、保育所「若竹の園」の創設期(1926.1.1~3.31)の保育日誌を翻刻し、4・5歳児(幼稚園型)と2・3歳児(託児所)の保育内容について考察を深めた。 (3)近年の保育実践研究(現職研修):尾道市立中庄幼稚園(文科省指定)を中心とした「幼小接続カリキュラムの研究開発~言葉の育ちを通して」の実践研究に加わり、接続期カリキュラムを作成し、考察を深めてまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
保育所「若竹の園」における児童観の研究をした結果、大原孫三郎は今から90年前にすでに「子どもの人権」と「母親の人権」を保障し、「養育の社会化」を願って保育所を設立したことが明らかになった。このことは、子どもが社会で育つとはどういうことか、どのような環境が必要なのか、という大きな問題を提起しているといえる。今後は続いて「若竹の園」の保育内容についての考察を深めるつもりである。幼稚園については研究成果を公表するに至っていない。「奈良女子高等師範学校附属幼稚園」の保育内容を中心に研究を進めるつもりである。保育実践研究(現場)については、今年度は尾道市の幼小連携研究が主であった。今後は、大正から現在までの保育実践研究を整理し、保育実践研究史としてまとめるつもりである。
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今後の研究の推進方策 |
1.児童観についての文献研究、検討 2.保育所「若竹の園」のカリキュラム、実践(内容・方法)に関する資料(玉成幼稚園との関係)収集、検討 3.奈良女子高等師範学校附属幼稚園のカリキュラム、実践に関する資料整理、検討 4.大正から平成に至る保育実践研究の整理、検討 5.検討結果を論文にまとめ、研究成果を報告書にまとめる。著書を発行するつもりである。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の残金は、報告書をまとめて発行する予定ができなかったために生じたものである。 当該残金および平成25年度の研究費は、申請時の計画にしたがって、文献購入、資料整理や聞き取り調査のための旅費や人件費・謝金、論文にまとめるための諸費用、報告書作成発行に充てるつもりである。
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