研究課題/領域番号 |
24531019
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 玉川大学 |
研究代表者 |
坂野 慎二 玉川大学, 教育学部, 教授 (30235163)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 学校評価 / 教師教育 / 学力向上 / ドイツの教育 |
研究概要 |
1.文献調査と現地調査による研究枠組みの確立。先行研究は、学力向上施策として、(1)学校の自助努力(教員の能力開発を含む)、(2)学校と行政機関、大学・企業の緩やかな連携による教育基盤整備、が重要であることを示してきた。学校自己評価はあまり進まず、学校外部評価による刺激が必要であった。これらの点は研究代表者の科研費中間報告書(2011)等で指摘してきたところである。しかし、幾つかの国・州で学校外部評価政策はすでに縮小局面に移っていることが確認できた。その主要な要因は、財政的負担である。そのため、各州政府は、学校支援措置、教員の能力開発へと政策重点を移している。ドイツ語圏諸国等でも、(1)に該当する教員研修の重要性等が増していることが確認できた。教員の能力開発は各国共通の課題である(『日本教師教育学会年報』2008年の吉岡真佐樹論文他)。スイスでは2000年代以降、教育大学改組が行われているが、その学修課程分析は、日本ではあまり行われておらず、分析を進める必要がある。ドイツでもボローニア過程において、養成課程の再編が行われ、実習重視が明確になっている。とりわけ、教員の能力開発は、ドイツ各州で重要性を増している。現地調査を実施した、ベルリン市、ノルトライン・ヴェストファーレン州等では、大学の養成段階におけるモジュール化が進んでいる。教員のコンピテンシー・モデル作成が各州で進んでいる。それは常設各州文部大臣会議(KMK)の決議に基づくものである。しかし各機関の連携はあまり進んでいない。 2.学力向上政策及び就学期における学校以外の支援政策の調査を実施した。ドイツ語圏では半日学校から終日学校へと学校の機能拡大が進められて、その結果が検証されつつある(Holtappels等)。終日学校導入は、各州政府における相違が少なくない。 3.国内では、上越市の学校における教師教育モデルを分析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.学校外部評価を基盤とした質保証政策の停滞傾向を確認することができた。シュレスヴィヒ・ホルシュタイン州における学校外部評価の廃止は、財政的問題であることが判明した。また、バーデン・ヴュルテンベルク州でも学校外部評価を継続するかどうか、議論があることが明らかになった。しかし、実施を継続している州は、その効果を認めている。学校外部評価の導入段階から、その効果・効率性へと研究・政策の主題が推移してきていることを解明できた。 2.学校の質保証政策の重点は、学校外部評価政策から教員の質向上政策へと移ってきている。教員の質向上政策が重視されてきていることが確認できた。教員養成段階におけるコンピテンシーを基盤としたモジュール化、実践力をつけるための実習と大学の授業の関係性強化、という傾向が看取できる。更に、ドイツの教員養成では、大学修了後に試補制度が置かれているが、従来はその関係が断絶的であった。今回調査を行ったハンブルク市では、そうした教員養成関係機関の連携を図るための組織が設置され、関係者が連絡を取り合うようになってきていることが確認できた。こうした事例が他の州ではどのようになっているのか、その効果はどのようなものかを今後検証していく必要がある。 3.ドイツの他州、及びヨーロッパ諸国においても、教員の質向上は重視されていると考えられる。しかし、ヨーロッパ連合レベルでは、2010年以降、まとまった文書や政策が打ち出されていない。多くの国では、ボローニャプロセスにおける大学での教員養成の変更がほぼ一段落したところであり、今後は教員の現職教育が重視されていくことが予想される。ドイツでも教員の現職教育を重視する施策を行う州が出てきた。この点については、今後研究を深める必要がある。 4.日本における研究。都市部(東京都、神奈川県)と地方(新潟県)における教育実態について、実態を訪問調査した。
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今後の研究の推進方策 |
1.学校外部評価を基盤とした質保証政策の効率性の研究が必要である。オランダやイギリスでも学校外部評価がある程度定着すると、その効率性を高めるために、学校外部評価の重点化や簡素化を進めている。他国の状況を文献調査や現地調査で把握し、その傾向を明らかにすることが求められる。 2.教員養成の質向上政策の分析。教員養成段階におけるコンピテンシーを基盤としたモジュール化、実践力をつけるための実習と大学の授業の関係性強化、という傾向がドイツのいくつかの州で看取できた。今後、こうした傾向がどの程度拡がりを見せているのかを、文献調査及び現地調査で確認する必要がある。特にハンブルク市のように、教員養成関係機関の連携を図るための組織が設置され、関係者が緊密な連絡・協力を行っている事例があるのかを調査する。 3.教員の現職教育に関する研究。前述したように、ヨーロッパ連合レベルでは、2010年以降、まとまった文書や政策が打ち出されていない。多くの国では、ボローニャプロセスにおける大学での教員養成の変更がほぼ一段落したところであり、今後は教員の現職教育が重視されていくことが予想される。ドイツでも教員の現職教育を重視する施策を行う州が出てきた。バイエルン州等地域に教員の現職教育の拠点を設置する州もでてきている。こうした事例の把握とその効果についての研究を進める必要がある。 4.教育政策の重点化に関する研究。ヨーロッパ各国において、リーマンショック以降、国家財政が非常に厳しくなってきている。このため、教育政策関連予算も圧縮される傾向が看取できる。それぞれの国がどの領域に重点的な資源の投入を行っているのかを分析し、上記の学校教育の質保証、教員の質保証政策以外の領域を検証する。 5.日本における調査。継続して東京都、神奈川県及び新潟県における調査を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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