研究課題/領域番号 |
24531023
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
菅野 純 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (80195180)
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研究分担者 |
桂川 泰典 岡山大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (20613863)
藤井 靖 早稲田大学, 人間科学学術院, 助教 (50508439)
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キーワード | 教師のメンタルヘルス / キャリア支援プログラム / 教師の自己理解 / 自立型キャリアアップ / 教師のストレス / 予防的・開発的方法 / 教師の教育指導力 / 教師の問題解決スキル |
研究概要 |
本研究は,教師のメンタルヘルスおよび問題対応スキルの向上を目的とした自己アセスメント型キャリア支援プログラムの開発を行うものである。本プログラムは教師自らの教育活動を支える心理的状態を把握し,自分が既に獲得している能力,まだ不十分な能力等についての自己理解を促進するものである。そうした自己理解によって教師の抱える心理的問題が整理されると同時に次なる課題が明確になる。その後,教師が個別実施型およびピアキャリアアップ型ワークを通して自立的にキャリアアップを図ることの支援を目的とする,というものが研究の全体像である。 平成25年度は引き続き,まず文献研究により現代の教師たちの置かれているストレス状況や従来行われてきた予防的・啓発的対応方法とその成果について改めて探索する作業を行った。また本研究で着目している自己理解および教育指導力を向上させるという視点から,教師支援のあり方に言及したレビュー論文は国内外を概観してもほとんどみられないため,まずは教師研究の中で上記要因がどのように扱われているかの精査を行った。その上で,その近接要因を導入した尺度およびキャリア支援プログラムの開発・施行上での問題点について丁寧に考察を行った。加えて,レビューした論文の妥当性については現役教師を対象とした質問紙調査およびインタビューを通して確認を進めた。 成果としては,教師を対象としたさまざまな予防的・啓発的手法をさらに抽出することが出来,いくつかの領域に分類することが出来たが,その効果測定についてはやはり実証的に検証されてきたとはいえず,プログラムの広い普及を踏まえると今後の大きな課題と思われた。また,教師におけるストレス状況とその対処法,対応したプログラムについて関連づけて言及されたものはほとんどなく,以後の研究課題とすべきと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は,教師のメンタルヘルスおよび問題対応スキルの向上を目的とした自己アセスメント型キャリア支援プログラムの開発を行うものであるが,本年度は引き続きその前提となる,情報収集と考察を進めることができた。しかし教師を対象とした調査についてはより対象人数を増やし,データを蓄積する余地があるため,おおむね順調な進展であると判断した。なお,研究全体の進捗状況に問題は認められない。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,教師の自己理解と教育指導力向上のための心理尺度(仮称:教師発達尺度)の作成と,尺度としての信頼性・妥当性を検証する。小・中・高の学校現場の教師(各50名,計150名)に質問紙調査(自由記述)および半構造化インタビュー調査を行い,教師のさまざまな生活場面での精神的充足の機会と必要とされる社会的適応力について調査を行い,既成尺度,文献レビューで得られたデータも勘案しながら原項目を作成する。作成した原項目を基にIBM SPSS Statistic 20 による因子分析および,IBM SPSS AMOS 20 によるモデル適合度の分析を行い,さらにバーンアウト尺度(久保・田尾,1992),教師のソーシャルスキル尺度(河村,2003),成人キャリア成熟尺度(坂柳,1999)との関連から妥当性を精査する。併せて,現役教師による内容的妥当性の検討のためのインタビューを実施し,尺度の有用性を吟味する。 次に,教師発達尺度(仮称)についての実態調査を行う。申請者がここ十数年教員研修を行ってきた独立行政法人教員研修センターを始めとして,東京都教育庁,埼玉県総合教育センター,東京都稲城市教育委員会,所沢市教育委員会の各機関を通じて質問紙調査を行い,のべ1000名のデータを収集することを予定している。またそのうち30名には半構造化インタビューによる調査を行い,質問紙調査の結果との比較から尺度の安定性を考察する。 本研究で作成した尺度を用いた上記質問紙調査では,年齢・性別・教歴・学校規模による差異を検討するとともに,フィールドが多岐に渡っていることを活かして地域差などの環境要因にも着目して考察することとする。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は本格的なマスデータの収集と処理に入る予定であるため,その一連の流れの中で生じる必要物品を購入したり,学会において成果を発表するための費用,さらには人件費を拠出するために必要である。 マスデータの処理を行うため,統計処理ソフトを購入する計画である。また伴って,資料ファイリング用ファイル,印刷紙,その他関連した文具を購入する。調査票印刷費,調査票郵送費(往復),調査結果報告郵送費用としても使用する。さらに,質問紙調査のための旅費,学会での研究成果発表費用,データ処理のための研究支援者雇用費,ヒアリング謝金としても使用する計画である。
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