研究課題/領域番号 |
24531024
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研究機関 | 創価大学 |
研究代表者 |
坂本 辰朗 創価大学, 教育学部, 教授 (60153912)
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キーワード | 女性研究者支援(アメリカ合衆国) / 高等教育論 / アメリカ合衆国大学史 / ジェンダー / 教育政策 |
研究概要 |
アメリカ心理学会(American Psychological Association、以下、APAと略記)において女性委員会――より正確にはその前身組織「心理学における女性の地位に関するタスクフォース」(Helen S. Astin委員長)――が成立した直接の契機は、心理学および心理学会における性差別克服を目指して直接行動をおこなった女性心理学者たちの会派であった、心理学における女性連合(Association for Women in Psychology、 以下、AWPと略記)によるAPA執行部への働きかけであり、これなしにはAPAの女性研究者支援政策は発動しえなかった。さらには、タスクフォース設置は、AWPが提出した、性差別克服のための膨大な要求の一環であった。その基本的な方策とは、一方では連邦政府による法的な規制(EEOCによる勧告、大統領命令11375によるアファーマティブ・アクション、さらには合衆国憲法修正案ERAの可決など)を求めつつも、他方では、妊娠、出産、そして育児という、従来は家庭という私的な領域の問題として、特に女性の研究者への支援政策の中には入らなかった問題までに踏み込んだものであった。しかしながら、タスクフォース成立の時点においては、この後者の問題認識は、少なくともAPA理事会やカウンシルに共有されるものではなく、AWPにとっては以降の課題として残った。 このAWPとAPAの関係を、前年度の研究で明らかにした、アメリカ歴史学会(AHA)とその女性会派であった、女性歴史家調整委員会(CCWHP)と比較してみると、前者の方がはるかに、女性会派対学会執行部という対立の構図が明らかになる。この原因は、AWPがまずもって、フェミニストたちのグループであり、心理学会内における活動以上に、学会の外における社会改革運動を重視したことにあったからであるが、それはまた、アメリカ社会における心理学という学問的認知に関わる問題でもあったと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度におこなったアメリカ歴史学会(AHA)とその女性会派であった女性歴史家調整委員会(CCWHP)について、さらには、アメリカ心理学会(APA)と心理学における女性連合(AWP)との関係について、いずれも査読付論文として公表したことで、最終年度の課題(アメリカ社会学会における女性会派の専門学会への展開)への区切りとすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
歴史学、心理学、社会学という三つの分野で、女性研究者支援を、女性会派から専門学会への展開という観点から、比較分析するという研究計画は、社会学分野における研究課題を残すのみになった。ただし、元々の研究計画では予定していなかったが、上記の三分野よりももっと若い学問分野と言えるアメリカ研究(American Studies)を入れることで、より精密な比較研究が可能になると考えられるため、American Studies Associationの事例を加えていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初予定していた資料の購入が、史料調査先にて一括して電子媒体で入手可能になったために、この部分に差額が生じた。また、資料整理として予定していた謝金は、当初予定が、資料のデジタル化のためのアルバイト謝金であったために不要になった。 次年度の研究総括の際に必要とされる翻訳や論文校閲のために宛てる。
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