保育所保育の意義と役割を解明する手がかりを得るために、近代日本で主流となる学校教育の補完としての家庭教育論とは異なる「家庭教育」論の特質等を知るため、安部磯雄、堺利彦、久津見蕨村の家庭教育論を検討した。 その結果、(1)堺は「家庭教育」論を著したと位置づけられること、(2)1900年代の日本においては、将来の社会の姿とそのための教育のあり方を見通したところに「家庭教育」論が成立していたこと、(3)「家庭教育」論が示す家庭像は、いわゆる「近代家族」の家庭像と重なる面もあるが、同居人や雇人を家族に含み、親戚、友人や隣人といった家庭外の社会にも開かれた場として構想されていたことが明らかになった。
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