研究課題/領域番号 |
24531028
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
笠井 尚 中部大学, 全学共通教育部, 教授 (10233686)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 学校施設 / 教育行政 / 学校経営 |
研究概要 |
(1)フィールドワーク関連:愛知県犬山市における学校施設計画では、改築中のH小学校の体育館および給食室・多目的ホールの建設が進み、その実際的な施工に関して、および来年度工事予定の中庭の実施設計についての助言を行った。市の全体計画については、次期改築予定学校の改築プランについて、もっとも基本となるアイデアを提示して、教委と協議したところである。日進市の小中併設校が竣工した。とくに図書館の中央配置の提案は教委で高く評価され、学校全体の計画の中で、司書担当教諭の精力的な活動につながる可能性がある。また、学校経営案への建設コンセプトの盛り込み提案は、設計者によって発展させられて、1枚ものの常設マニュアルが作成される可能性がある。高山市での地域カリキュラム支援の学校環境整備は、郷土教育実践が全市的な調査の段階に留まったため、十分な提案にまでは至らなかった。 (2)学会発表等:日本学習社会学会において、地域住民の学校経営参加に関する課題研究の一環で、「地域住民の学校経営参加と学校建設-学校の設計や学習環境整備への意思の反映」について報告を行った。日本建築学会においては、犬山市の老朽化校舎更新についての基礎的調査の結果を報告した。財政的な余裕のない自治体を中心に、学校の直面する学校施設維持管理についての厳しい状況があり、そのことを整理・分析して発表したが、教職員の活動に関心が薄いと思われる研究者からは、理解されなかった。 (3)建築ジャーナル誌の、中部地区学校建築特集に寄稿する機会を得て、近年、中部地区の学校設計に携わった設計者と貴重な情報交換ができた。全国的な先進学校施設の問題点に関する議論は、この後、さらに発表の機会が得られる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本務が予定以上に混んでいて、海外調査を実施することができなかった。別の研究において実施された海外学校調査において、間接的にではあるが、学校設備上の活用事例についての情報収集が若干できた。 国内調査においては、今年度は、中国地方と北海道の事例について調査を行った。建築界で高い評価を受けている木造建物についてはユーザーから問題点が指摘されたが、減築したエコ改修の事例では、使い勝手のよさが高く評価されていた。 学校経営関連の書籍の分担執筆において、学校施設研究の成果を活かす機会を得た。ひとつは新しい時代の教頭の職務遂行について分析・考察するもので、もうひとつは、東北大震災以降の学校の危機管理についての法的責務の内実を検討するものである。いずれも来年度に出版される予定である。 建築ジャーナル誌における設計者との意見交換は、本研究の計画当初にはなかったものだが、大変、有意義な機会となった。本研究者が収集してきた教育と建築の融合・離反の事例についての情報は、設計者の気づかない要請についての情報として提供できた。 以上のように、海外調査の点では来年度に先送りになったものの、国内調査の成果を活かした戦略的学校施設建設に関する出力や情報交換が予定より進んだことにより、「おおむね順調」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
(1)犬山市の学校改築計画作成そのものは、市の総合計画との兼ね合いで進むので、そのペースをこちらで決めるわけにはいかないところに研究推進の困難さがある。しかし、教委・学校との連携は十分に取れているので、先に基礎資料を作成した活動を発展させて、基本計画のたたき台ともいうべきプランのひな型づくりを進めたい。改築を進めてきたH小学校は、プール、中庭、外構の施工という改築の最終段階にある。とくに中庭のあり方は、子どもからの意見集約を活かして設計がなされている。来年度は、施工に併せてワークショップを企画・実施し、「使える中庭」のイメージをつくる方向で学校施設の効果を高める実践的研究につなげたい。また、H小学校では校長の交替によって、若干の齟齬の問題も出てきている。この問題は本研究が中心的な課題としているところにもつながるため、その解消方法についても模索したい。 (2)国内学校施設調査を発展的に継続したい。実績に挙げた、教頭の職務遂行に関する著作で協力を得た校長や指導主事が、優れた建築事例(廃校、再利用予定)や地域支援を促進する事例にかかわっているため、この著作による協働組織を活かして、戦略的学校経営を支える学校施設についての情報収集を進める。本研究と並行して進めている授業方法についての研究の成果を活かし、戦略的な学校施設設備利用のモデルプランづくりを始めたい。日進市の学校建設に際しての、教室内および教室周り設備のモデルルーム方式の検討は、その場では、必ずしも十分な効果を発揮する素地がなかったかもしれないが、教育方法論的な可能性が感じられた。今年度の研究の中でその応用を考えたい。 (3)先送りになっている海外学校施設調査を計画・実施する。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は、本務の状況により、海外調査が実施できなかったため、その分の研究費は次年度使用ということになった。先送りになった海外調査を、来年度は実施したい。今年度は、第一線の設計者との意見交換が有意義であったこともあり、海外調査においても設計の専門家からの助力を得て、調査内容の充実を図りたい。 今年度の国内調査の成果は、設計者や教委関係者との情報交換に資するものとすることができた。来年度は、国内調査も、精力的に行いたい。とくにこれまであまり情報収集のできていない地域の先進事例、建築界で評価の高いもので10年を過ぎた事例、これまでの調査校のうちその後の変化の情報を得ているものを中心に、情報収集を進めたい。
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