本年度も研究計画通りに、国内調査・海外調査・文献調査に取り組み、研究進捗報告を中心とした研究会を実施した。 国内調査については、引き続き高知県を中心的なフィールドとして調査研究を実施した。主幹教諭だけでなく、校長をはじめとする管理職への聞き取り調査も実施し、主幹教諭の職の確立について、学校組織マネジメント全体から検討した。 海外調査については、9月7日~14日の日程でカナダ・オンタリオ州を訪問し、同州の教員リーダー(teacher leader)をめぐる政策展開と力量形成について、州教育当局、地方学区当局、学校現場においてインタビュー調査を実施した。 研究会については、3度実施した。各回とも、研究メンバーの研究進捗報告をもとに、日本、アメリカ、カナダ、イギリスの動向を俯瞰的に整理し、教員のリーダーシップ開発をめぐる国際的潮流と日本的特徴について検討した。研究の成果は、2014年6月の日本教育経営学会において共同研究発表を行った。また、研究代表者所属機関の研究紀要に研究論文として投稿し、掲載に至った。 高知県での継続的なアクションリサーチと多国間比較を重視した本研究を通じて、日本における「新しい職」の確立に関わって次の点を明らかにすることができた。すなわち、日本において主幹教諭は学校組織におけるライン機能の強化(垂直的リーダーシップの発揮)として意識されてきたが、実際には校長のビジョンとの関わりの中で、創造的な業務を担う傾向も見られ、そうした指向性の中には、水平的リーダーシップを発揮するよう期待する「教員リーダー」的な方向も示唆された。このような指向性は、学校におけるリーダーシップ論の見直しを図る可能性を有していると受け止め、引き続き研究を進めていく必要がある。
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