研究課題/領域番号 |
24531041
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 中国学園大学 |
研究代表者 |
高木 亮 中国学園大学, 子ども学部, 講師 (70521996)
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研究分担者 |
都丸 けい子 聖徳大学, 心理・福祉学部, 講師 (40463822)
大和 真希子 福井大学, 教育地域科学部, 准教授 (60555879)
露口 健司 愛媛大学, 教育学部, 准教授 (70312139)
川上 泰彦 佐賀大学, 文化教育学部, 准教授 (70436450)
北神 正行 国士舘大学, 体育学部, 教授 (80195247)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 教師のストレス / 教師のメンタルヘルス / 教師のキャリア(教職生活) / 教師の職能開発 |
研究概要 |
【24年度の申請目的・実施計画】 平成24年度科学研究費助成事業交付申請時点の研究計画では(1)教職員ストレス問診量的・質的データの分析・発表の開始,(2)教師のメンタルヘルス・キャリアに関連した研究200部の蓄積とショートレビューの研究者間共有(既存保管分を含めて合計500部超)の2点が平成24年度に実施事項であった。共同研究者5名および連携研究者2名(妹尾渉国立教育政策研究所主任調査官,波多江俊介九州大学大学院博士課程院生)の貢献のおかげで後述するような研究業績の確保がなされた。 【24年度の実施状況・成果状況】 具体的には,(1)「教師ストレス・メンタルヘルス」研究を超えて「教師のキャリア」という研究概念の提案が各学会発表(日本教育経営学会と日本教育行政学会での共同発表など)での議論および査読誌採択までの過程を通して「妥当である」と認定されつつある。(2)研究者間共有のショートレビューのリスト化(Microsoft社Skydriveで共有)は論文547部分を達成しており平成25年度には本格的なレビューの発表(日本教育心理学会自主シンポジウム話題提供等)と論文投稿の準備中である。また,ストレス性疾患の治療・予防に限った側面では平成24年度中に査読誌(『学校メンタルヘルス』)掲載を果たしている。 このほかにも計画以上の成果として『九州教育経営学会』(査読誌)において管理職に絞ったストレス性精神疾患指標(バーンアウト)のメカニズムに関する研究が掲載されており,これは管見の限り国内初の査読誌掲載学校管理職のストレス研究である。量的データの源である『教職員ストレスチェッカー』(産学連携のシステム)も24年度に4000部以上のデータ増強と2000名を超え,同一教師の縦断的回答データも得られている。 これらを原動力に25年度より独自の調査研究とシステム開発の議論につなげる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成24年度科学研究費助成事業交付申請書作成の時点での研究計画では,平成24年度は(1)「教師のキャリア」全体の概念構築の課題整理,(2)包括的なレビューの整理,を課題とした。 (1)については査読誌『九州教育経営学会紀要』に管見の限り国内初の管理職ストレス研究の論文掲載を果たし,同様に国内初の指導主事のストレスに関する学会発表を行っている。この他にも人事異動の影響に関する研究とあわせて「教師のキャリア」という概念提示を学会発表として提示・議論した。概ね好意的・建設的批判を得ており,本科研の目的である「教師のキャリア」の意義と方向性が確認できた。 (2)については大量の論文を保管し共同研究者・連携研究者らとレビューを行いあい議論を積み重ねるという科研でなければ難しい資料の精選・蓄積を積み重ねてきている。そのごく一部の治療・予防専門研究のレビューが平成24年度に査読誌『学校メンタルヘルス』に掲載されている。今後より積極的にレビューを発表する予定である。 また,データ収集については質的(自由記述回収700超)・量的データ収集(横断データ4000超,縦断データ2000超)も予定通り確保数を増やし得ている。これら平成24年度の蓄積された成果は今後の研究計画の基盤として有意義なものになるといえる。 一点残念な点は学校現場や教育行政との調整の中で当初めざした人事異動やストレスに特段影響の強い地域の整理をはかる「ハザードマップ作り」を今回は見送った点である。これは地域や調査対象組織に与える影響が甚大であり倫理的側面から慎重にならざるを得ない事由であると理解している。今後,自由記述やインタビュー調査,量的調査の積み重ね,公刊統計との照らし合わせを通して,具体的な地区や地名の提示ではなくより詳細なメンタルヘルス阻害風土の強い地域特性の描写という形で課題に応えていきたいものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
以下においては平成24年度科学研究費助成事業交付申請書に基づきつつ,若干の変更点を交える形で研究推進方策の説明を行う。 【平成25年度】 交付申請書では(1)レビュー・既存データ等の発表・投稿,(2)独自の新規調査または開発実践研究の開始を課題としている。(1)についてはすでに着手済みで本報告書の業績にみるように成果が上がっており,平成25年5月現在査読誌3部の掲載確定済みである。蓄積データや分析状況は課題はあるものの,すでに国内に例のない規模・質であると自負する。発表と投稿・寄稿にむけて全力を尽くしたい。(2)については今のところ教育センターの初任者研修における「教職カルテ」の提案が複数の自治体で関心を得ている。具体的には佐賀県と宮崎県の教育センターで平成25年度より開発実践研究の協働実施内諾が得られている。また,岡山県と岡山市の教育センターも現在協働実施を検討中である。現場のニーズに適応的に対処しつつ研究と社会貢献を両立する条件が整いつつある。 【平成26年度】 上述の平成25年度の(2)にあたる開発実践研究は単年度で終わるものではなく数年間で研究と洗練を積み重ね教職キャリアの安定的な開発支援を形作ることを目的としている。これは本科研共同研究者と連携研究者らの専門性こそ異なるが共有するライフワークであり,本科研研究年限ではフォローしきれない。そのため,本科研としては平成26年度はあくまで本科研成果の説明責任を全力でより多くの媒体でより質の高い内容で提示する期間と定義する。具体的には平成25年度までのデータや知見をできるだけ現場教員や教育行政勤務者にもわかりやすいような発表・各種成果物の作成に注力していきたい。特に継続的かつ連続した研究成果の発信と議論,さらに研究蓄積過程の記録としてホームページの重要性を認識している。平成26年度早い時期にホームページ開設を図っていきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度科学研究費助成事業交付申請書作成の時点では平成25年度は(1)レビュー・既存データ等の発表・投稿, (2)独自調査の実施を想定した計画・予算編成を行っている。 (1)については,決定している学会発表だけで日本教育経営学会(筑波大学),日本教育心理学会(法政大学),日本教育行政学会(京都大学),九州教育経営学会(九州大学他)などは共同研究者や連携研究者が複数名参加する。この他にも共同研究者・連携研究者らの推薦に基づき積極的で学際的な議論を図るため旅費等がかかる見通しである。 (2)については,旅費(現時点では佐賀県教育センター,宮崎県教育研修センターが重点調査地となる)を中心とした研究費の執行を想定している。次いで,調査データの収集や入力,データ保管に関する費用(持ち運び可能でセキュリティに安心感のあるデータ保存・処理用途のPCやメモリ,印刷用プリンタ諸経費,学生の入力・情報収集補助費,データ処理に関わるソフト費用,調査用紙等の郵送費用など)を想定している。 定期的な共同研究者と連携研究者らの会議は学会等を利用し最小限度としつつも,発表や寄稿の準備に関するやむをえない会議を昨年度も複数回設けている。主に博多駅の九州大学博多駅オフィスや文部科学省内国立教育政策研究所,岡山市内の安価な会議室などの利用が想定される。 平成25年度は調査を主軸とするもっとも費用が多くなると想定された年度である。これを想定し平成24年度より予算の繰り越しも一部行い,平成26度予算の使用を要することなく計画執行がなされる見通しである。なお,研究計画と昨年度状況を勘案すれば,想定より若干旅費に重点がかかる研究費の使用になるものと予測できる。このことは,より積極的な成果の公表・議論につながるものと期待できる。なお,平成24年度研究費使用において平成25年度の予算使用額はなく「該当なし」となる。
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