本研究は、東日本大震災からの教育復旧復興過程の記述を通じ、復興の機構・組織、過程などの類型化を進めること、そして、どのような復旧・復興類型がどのような教育イノベーション誘発効果をもたらすかを分析することに焦点を置いてきた。この3年間の研究成果として得られた主要点は以下のようなものである。 ①東日本大震災からの教育復旧復興過程に関しては、学校建て替えが必要とされた約200校の被災の実態の差異や被災自治体の考え方の違いにより、異なったパターンを取り出すことができる。 ②我が国の被災地の差異と並行して、社会文化的背景を異とする震災の復興過程の対比のため、ニュージーランドのカンタベリー大地震については、科研費支給の3年間毎年定点観測を実施してきた。ニュージーランドの復興体制で際立っているのは、教育省が前面に出ての復興プログラムの作成、復興政策の展開である。学校の再建を教育イノベーションの視点を前面に出して進めるには、このような方式の利点は大きい。 ③被災後の教育イノベーションの実態や水準をとらえる調査手法は重要な懸案であったが、以前に科研費補助金を用い複数の研究者の手で開発された生徒対象の意識調査(ソーシャル・キャピタル調査)のためのアンケートを一部活用し、岩手県の被災地の生徒約1700名の悉皆調査を実施した。被災地の子どもの生活・学習環境の変化の把握と復興プログラムの寄与をとらえる手法としてである。今回の研究では、被災地ひとつのみしか対象にできなかったため、一般性に難があるが、調査手法そのものの可能性は確認できた。 ④海外との比較に視点に立って、台湾の中部大地震被災地についても、実地踏査を実施した。
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