本調査研究は、指導主事による校内研究活性化のための指導モデルを考案するという目的を達成するために、大きく二つの作業を実施した。 一つは、指導主事を対象にした訪問指導の内容調査である。平成25年度に教育事務所を対象に、平成26年度に教育事務所の学校経営指導と教科指導担当指導主事を対象にした調査を実施した。その結果、学校経営指導と教科指導は別の訪問で実施される場合が多いこと、教科指導のみを主に行う教育事務所と学校経営と教科指導の両方を指導している教育事務所の存在が明らかになった。全国学力・学習状況調査で良好な成績を収めている秋田県と福井県はともに、学校経営と教科指導の両方を指導しており、そのための体制が充実していた。(報告書第1部) 本研究のもう一つの作業は、指導主事が学校を指導する場面に関するモデル手法を開発することである。本研究が副題に「コーチング」を掲げたのは、課題のある研究授業を参観した指導主事が、教師が受け止めてモチベーションを高めることができる指導をいかに工夫したらよいかを、コーチングのスキルから援用することを意図していた故である。その意図に沿ったモデル開発も行ったが、同時に学校経営に焦点を当てた指導モデルも開発した。指導主事が教師や校長と面談する際に留意すべき姿勢に加え、校長に対して質問する視点を提示した。(報告書第2部第1章) 校長に対するコーチングの視点は、学校経営そのものを活性化する組織開発の手法によるもの、校長が職員にコーチング的な姿勢で接することを支援するものに分けられる。組織開発の視点からは、指導主事自身の組織開発力を高めるためのプログラムを開発した(第2章)。校長が職員にコーチング的な姿勢で接する際の視点として、校内研究体制を構築するために、指導主事が校長に接する場面、校長が研究主任に接する場面を主にコーチングモデルを開発した(第3章、第4章)。
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