研究課題/領域番号 |
24531050
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研究機関 | 福岡女子大学 |
研究代表者 |
野依 智子 福岡女子大学, 女性研究者支援室, 教授 (40467882)
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キーワード | 若年ホームレス / 中高年ホームレス / 生育家族 / 家族関係の質 / 未婚率 / 家族賃金 / 就労支援 |
研究概要 |
平成25年度は、平成24年度の若年ホームレス調査との比較のために、50代・60代のホームレス(従来のホームレス)調査をした。若年ホームレスのヒアリングと同様、生育家族の構成と家族関係の質をヒアリングして比較することが目的であった。 対象は、若年ホームレス調査と同様にNPO法人北九州ホームレス支援機構が支援する高齢の元ホームレス13名であった。平均年齢67.1歳、男性10名、女性3名である。13名中12名が生活保護受給者で、1名(女性)がパート就労もしながらの半福祉半就労である。また、6名はアパートでの地域生活者だが、7名はNPO法人北九州ホームレス支援機構が運営する高齢者施設の入所者である。 結果、生育家族の構成においては、18歳までに母子世帯4名、父子世帯2名、継父もしくは継母に育てられたケース2名という結果で、13名中8名がいわゆる両親(この場合、実の両親)に育てられていないことになる。この割合は、若年ホームレスの15名中7名という結果とほぼ同様の結果であるといえる。つまり、若年ホームレスも中高年ホームレスも両親に育てられたケースが少ないといえる。結婚歴については、中高年ホームレスの場合、13名中10名が離婚、1名が死別、2名が未婚であるのに対し、若年ホームレスは15名中11名が未婚であった。これは、中高年ホームレスの場合は、職歴の中で家族を養えるだけの賃金「家族賃金」を得ることができたことを示している。しかしながら若年ホームレスの場合は、「家族賃金」という賃金体系がすでに崩壊しているため、結婚できないすなわち未婚率が高いという結果になっているといえる。さらに、生育家族との関係の質であるが、生保受給後(自立後)に兄弟姉妹さらには両親などとの関係が回復した事例は、若年ホームレスにはなかったが、中高年ホームレスの場合は、13名中4名の事例がみられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成25年度は、12月に申請者の所属が変更になったため、移動にともない11月から1月いっぱいまで調査が中断した。そのため、ヒアリング対象者も当初の予定よりも5名程度少なくなり、達成度はやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度の平成26年度は、これまでの若年ホームレスのヒアリングならびに50代・60代の従来のホームレスのヒアリングから、若年ホームレスの特徴と就労支援における課題を明らかにした上で、若者の就労支援の先駆的事例を調査分析し、若年ホームレスの「自立」のためのシステムを考察・検討する。事例としては、以下の3か所とする。 (1)若者の自立支援の事例調査/三鷹市:若者の自立支援を行っている三鷹市のNPO法人文化学習協同ネットワークの事例調査とする。同NPOでは、地域若者サポートセンターを設置し、相談事業や仕事体験プログラムなどを行っている。また、「ひきこもり」をもつ家族のためのセミナーなども実施している。仕事の紹介だけでなく、就労にむけた最初の一歩が踏み出せるよう就労の準備期間を設けた支援を行っている。 (2)若年無業女性の自立支援の事例調査/男女共同参画センター横浜(フォーラム):働きづらさ、生きづらさを抱える独身女性に早くから着目し、若年無業女性を対象とした就労体験、居場所づくりを行っている。若年男性の未婚率が高くなる以上、若年女性への就労支援は必要性が高まる。横浜フォーラムの事例は、その先駆的事例といえる。 (3)ホームレスに寄り添った自立支援の事例調査/抱樸館福岡:生活困窮者、ホームレス状態の人などの自立支援施設。入居に際しては生活保護を利用し、入居後は就労サポートを行うことで経済的自立をめざす。2010年からの設置であるが、若年者も一定数入居しており、生活支援と就労支援をあわせた総合的支援を実施している先駆的事例である。以上の3か所の事例調査・分析をふまえて、若年ホームレスの生活支援/就労支援に関するシステムを考察し、報告書を作成する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、12月に申請者の所属が変更になったため、移動にともない11月から1月いっぱいまで調査が中断した。そのため、ヒアリング対象者も当初の予定よりも5名程度少なくなり、達成度はやや遅れている。 平成25年度は、若年ホームレスの特徴を明確にするために、中高年ホームレスのヒアリングと比較することを計画していた。当初の予定では、15名から20名の中高年ホームレスのヒアリングを予定していたが、申請者の所属変更にともなう移動のため、13名のヒアリングにとどまっている。 したがって平成26年度は、5名程度の中高年ホームレスのヒアリングを補充する予定である。
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