研究課題/領域番号 |
24531056
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
恒吉 僚子 東京大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (50236931)
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キーワード | 日本型モデル / 全人的な人間形成 / 教育の国際比較 |
研究概要 |
本研究は、当初の研究計画に記載されているように、国際比較の視点から、(1)「日本型」(東アジア型)モデル借用の国際的言説の考察と欧米的理解枠組みへの問題提起、(2)国際比較の視点から、「日本型」人格形成教育の特徴・課題の分析、(3)「日本型」全人的な人格形成教育モデルの再構築(課題の意識化、より民主化されたモデルの構築)とそれを国際的議論の俎上にのせること、を目的としている。 これは、世界的規模でのグローバル競争が意識される中、国際学力テストで高得点をとる日本の学校教育の「学力」に関連した側面が国際的に注目される一方、学力面と不可分に結びついた人格形成面の仕組みは国際的にはほとんど認識されてこなかったとの理解に基づくものである。また、狭義の学力を越えた包括的な人間形成教育モデルの構築は、各国が21世紀の教育の方向性として模索しているものであり、本研究で扱っているテーマは国境を越える、今日的教育課題であるとの理解に基づいている。 本年度は予定されていた海外研究者を含む本研究テーマの国際シンポジウムの開催、及び海外への国際発信や調査、昨年度立ち上げたHP (http://www.p.u-tokyo.ac.jp/~tsunelab/tokkatsu/)の充実、及び、来年度予定している英文学術図書出版に向けた交渉を行なった。 具体的には、日本型教育モデルの国際化に関わってきたアメリカの研究者、昨年度の海外発信用の教師用ガイドブックにも関わった教員の研究組織、日本の教育について学習プログラムで来日中のアメリカ・コロラド大学の教師団、本プロジェクトに関係している大学院生を含む日本側の発表を含む国際シンポジウムを開催した。また、マレーシアの教員養成研修において本テーマで研修を行い、韓国での状況調査を行なう等、国際比較視点からの日本型教育モデルの位置付けと発信をさらに推進させた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
上記のように、国際比較視点からの本テーマの分析を通して全人的な人間形成モデルを位置付ける作業、及び、国際シンポジウムや海外の教員とのモデルをめぐる意見交換を通しての特徴の分析、課題や可能性の検討、海外研究者・日本の関連教員・本分野の若手研究者のネットワークの形成、海外発信用のHPや英語による教師ガイドブックの作成、英語による図書出版等、当初の計画通りに進んでいる。 狭義の学力にとどまらない、社会性や感情等の育成を同時に教育の目標としてターゲットする仕組み作りに対する海外における関心は高く、本研究における海外教員研修等においても、具体的な中身を更に発信してほしいという要請が極めて高い。
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今後の研究の推進方策 |
海外における日本型の包括的な人間形成モデル(カリキュラムに組み込まれた形での)への関心は海外に発信されてこなかったために知られてこなかったが、実際は、学問的のみならず、教育関係者・政策関係者においても非常にニーズが高いことが本研究の過程においても示されている。 海外発信の過程で、最大の問題となっているのは、言語の問題により、日本側の教育関係者が直接その実践やノウハウを海外に発信することが難しいことである。本年度は最終年度として本テーマに関する英語の学術図書をまとめると同時に、教育実践レベルでの海外発信・ネットワーク化の仕組み作りの土台を強化する方向で考えている。 最後の点については、具体的には、日本の関連実践をHP上で海外発信、意見交換が可能な仕組みを作ろうとしている。同時に、海外における教員研修や学会発表を続けると共に、上記のように、本テーマに関する英語による図書を出版を予定している。
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次年度の研究費の使用計画 |
最終年度は実施報告書でも記載したように、日本の教育実践を海外発信するにあたっての障壁となっている言語の問題、及び、実践を発信する形にするために、特任研究員を雇用する等の人的体制を整えるため。 上記のように、差額分は特任研究員の雇用(すでに契約済)、翻訳代等の実践の海外発信のために必要性が生じた項目に使う予定である。
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