研究課題/領域番号 |
24531057
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
倉石 一郎 京都大学, 人間・環境学研究科(研究院), 准教授 (10345316)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 就通学支援 / オールデー・ネイバーフッドスクール / アフタースクールプログラム / プレストン・ウィルコクス / フリーダムスクール / 福祉教員 / スクールソーシャルワーク |
研究実績の概要 |
本年度は、2014年3月31日より同9月15日まで、米国ウィスコンシン大学マディソン校教育学部において海外研修を行う機会に恵まれたことにより、特に米国の就通学支援に関する歴史研究において大きな進捗をみることができた。まず、ニューヨーク市を訪れる機会があったことから、ニューヨーク市公教育協会がビジティング・ティーチャー事業(拙著『アメリカ教育福祉社会史序説』春風社、参照)以降に力を入れた教育福祉事業である、オールデー・ネイバーフッドスクール事業について重要な資料を入手することができたものである。同事業は放課後の児童のケアにあたることを中心内容とし、第二次大戦後から50、60年代に隆盛をみた。あわせて、現代のニューヨーク市におけるアフタースクールプログラム(学童保育)の現状を視察する機会もえた。また、50~60年代の米国の動向においては、黒人たちによる公民権運動を見落とすことができない。ニューヨーク市においてもハーレム地区において、自主管理(コミュニティコントロール)運動が勃興した。そのキーパーソンであったプレントン・ウィルコックスの個人文書をアーカイブにおいて渉猟し、黒人地区における、地域のニーズに応える学校づくりを目指す運動の全体像を浮き彫りにする端緒を得た。今後この資料を、就通学支援の視点から読み解いていきたい。また60年代の公民権運動の重要な一部をなすミシシッピー州のフリーダムスクールについても一次資料を得た。 日本に帰国後は、米国で収集した資料を整理するかたわら、高知県の福祉教員制度に関する研究も進め論文を執筆したほか、高知県のスクールソーシャルワーク事業および中学生対象の放課後無料塾の現状視察とヒアリングも行い、現在の視点から歴史を捉える重要性を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は、これまで継続してきた米国のビジティング・ティーチャー(訪問教師)の歴史的変遷に関する研究を単著として公刊することができた(倉石一郎『アメリカ教育福祉社会史序説-ビジティング・ティーチャーとその時代』春風社)。これによって、当初の大きな目的の一つは達成できたものと考えられる。また米国で6ヶ月間の海外研修を行うことができたことで、ビジティング・ティーチャーの時代以降の、50年代~60年代の米国におけるいくつかの重要な就通学支援事業の展開について、資料を得ることができた。また、比較対象である日本についても、福祉教員に関する研究成果をさらに出すことができた点で進捗があったものと言える。全体として、当初の計画以上に順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、米国において収集した資料を整理、検討し、オールデー・ネイバーフッドスクール、ハーレム地区での自主管理運動、ミシシッピーのフリーダムスクールのそれぞれについて暫時論文を発表し、研究成果を世に問うていきたい。また、就通学支援をより大きな文脈に位置づけるために必要な理論的枠組みについて、福祉国家論や総力戦体制論、教育理論などに学び構築していきたい。これらの知見を、日本における事例研究(高知県の福祉教員制度、スクールソーシャルワーク制度)と比較しながら統合を図り、比較教育社会史的研究の成果として完成させていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度中に約6ヶ月間の米国滞在期間が生じ、滞在先の図書館設備が充実していたため予定していた図書(洋書)購入の必要性が減じ、物品費に余剰が発生したため。
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次年度使用額の使用計画 |
最終年度の研究まとめのために必要な物品費(図書購入費用等)に上乗せし使用する。
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