本年度は、まず日本の高知県において進めている福祉教員制度に関する資料調査において、大きな進展があった。高岡教育会館(高知県須崎市)所蔵の文書綴りより、1952年度の「高知県福祉教育大会」における発表内容が盛り込まれた大会資料を見つけだすことができた。従来明らかにされてきた福祉教員の役割は、家庭訪問や地域のコーディネータといったものにとどまっていたが、今回は新たに見つかった資料からは、特別に編成された学級における学級主任として子どもと関わるという役割に福祉教員がどのように関わっていたのかがつぶさに明らかにすることができた。福祉教員の全体像を明らかにするうえで、大きな前進と言える。また、福祉教員制度に関する資料調査でもう一つ大きな前進をみたのは、高知県人教所蔵の谷内照義メモの発見である。谷内は1950年度の福祉教員制度発足のときの初代福祉教員の一人で、高知市立朝倉中学校における長欠・不就学「一掃」の成果が注目された人物である。今回発見されたメモは、谷内が朝倉中学校での福祉教員時代の1年間、日々の活動を日記風に綴った肉筆のメモである。これにより、後年谷内自身の手でまとめられた著述や回顧とは異なる、生々しい活動ぶりが初めて明らかにされた。 また本年度は、昨年度米国において収集したアフリカ系アメリカ人学校におけるケアリング機能に関する文献の整理、またニューヨーク市におけるAll-Day Neighborhood学校(ADNS)に関する資料の整理を行った。日米双方で得られた諸資料の分析結果を突き合わせて、研究全体のまとめをはかった。
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